最初の理由は何だったか忘れた。
学校帰り、泣きながら歩いていた。
重く曇っていた空も遂に泣き出し、
秋の雨の冷たさに、身体が震えた。

「だいじょうぶ?」

その声は、聞いたことが無いほど綺麗な声で。
寒さなのか緊張なのか、理由はわからないけど、
少し震えていた。

「んっ…えっ…、う、」

声をかけられて反射的に顔を上げたら、
同い年くらいの女の子が立っていた。

女の子の服なんてよく知らなかったけど、
ピンク色の服だった。
肌がすごく白くて、外国の女の子みたいだと思ったんだ。

「なかないで…、ね?」

伸ばされた手には柔らかいハンカチが握られていて、
雨と涙で濡れた頬を拭いてくれた。



女の子の手は、秋雨に濡れてもほんのりと温かかった。

やわらかいゆび、

まるいつめ、

すべすべのはだ、

を、していた。



「…ありが、と、」

何とか泣き止むと、変に疲れて頭がぼうっとした。
ふらふらしていると、女の子の後ろから、その人によく似た大人の女の人が来て。

「お母さん。」

と、その子が呼んだので、顔を上げて女の人を見た。



白い雨の中に立つ、花のような人。

ほんのりといい香りがしていた。



うすべにのくちびるの、

やさしいほほえみのかたち、



「お母さん…?」



何が自分から立つ力を奪っていったのかわからなかった、

けれど倒れることの心地良さに抗えなくて、

水溜りに引かれるように倒れかけた身体を、母娘が支えてくれた。



「お母さん、この子、風邪をひいちゃう、」
「そうね、車に乗せてあげましょう。」



ああ、連れて行ってもらえる。



とても温かいところへ。



そんな気がしたので、黙って目を閉じた。



―あれから秋になる度に、あの時の夢を見る。
そして目覚めた朝は決まって、どこからか花の香りが漂ってくる。

窓を閉めていても。



早朝の冷え込みに、肌がざわりと粟立った。



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何かの始まりっぽい雰囲気になりました。
しかし最近こういうベタな回想というか、夢というか、
そういうのが出てくる作品にあまり触れていなかった気がする…。

今日のお花はコスモスです。花言葉が可愛すぎる!
だって「乙女の真心」「乙女の愛情」ですよ!?
久し振りに聞いたよこんな言葉!

ちなみにピンクだと「少女の純潔」、赤は「調和」、白は「美麗」「純潔」「優美」
だそうです。
どれも何ていうか…古き良き言葉だわぁ。

毎朝、出勤途中にコスモスを眺めるのが最近の楽しみです。
控えめでステキなお花ですよね。

最近は「チョコレートコスモス」というのもあるんだとか。
何とチョコレートの匂いがするそうですよ!実物を見て、嗅いでみたいです、是非!
ヴァンパイア種のユリも見てみたいなぁ…。
あとレインボーローズとか!



余計なお話が多くなってしまいました。スミマセン(^^;
他のお花と花言葉は以下の通りです↓

茴香(ういきょう)…「賞賛に値する」「讃美に値します」「力量」「不老長寿」「勇敢」
(仕事で成功した人にあげたいですね。フェンネルってこれのことだったのか)


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