祝宴の喧騒を逃れ、僕は裏庭へやって来た。
戦いに勝ったのは喜ばしいことだ。
これで次の戦いに進める。

僕達は、戦い続けて生きてゆく。

途中で死ぬのは弱い奴だ。
僕は強いので、絶対に死なない。

最後の1人には僕がなる。



今、宴で馬鹿みたいに盛り上がっている連中は、
次の戦いできっと皆死ぬだろう。
全ての力、全ての感情は、戦いの為だけに使われるべきなのだ。
それなのに、こんなところで無駄にしているのだから。

足りなくなって、なくなってしまうだろう。



最近とても呼吸が浅い。
気付くと息を止めていることだってある。
戦いの後の僕はぐったりとして、何もできない。
全てが煩わしくて、どうしようもなくて、



意識にかかった霧が晴れる頃には僕はまた戦場にいるんだ。



今、木陰で草を摘んでいる少女が見えた。

僕と同い年くらいに見える。
あれはきっと、僕のような戦士の世話をする係の娘だ。

こちらを振り返った。



「戦士様、何か御用ですか?」

耳に良く聞こえる声だった。高いが柔らかく、丸みを帯びた音。
口角がきゅっと上がった、幸せそうな顔の女の子だった。

「いや、ちょっと…外の空気を吸いに来た、だけ…、」

対して僕はどうだろう。
雄叫び、悲鳴、怒号、鬨の声…戦いの最中で発するのは実は形を持たない言葉だけだ。
そんな声に乱暴に扱われて、喉はすっかりやられている。
汚く掠れた声に文字通り閉口した。

「喉を痛めていらっしゃるのですね。」

そういうと、少女は手に持った薬草籠の中から、か細い緑を1つ摘む。
手の形は綺麗だったが、皮膚は少し荒れていた…仕事のせいだろう。
てきぱきと肩から下げられた鞄を開き、中から小さな器と、水筒を取り出すと、
摘んだ緑を器に入れ、水筒から熱そうな湯を注いだ。

白い器を満たす湯の中で、ゆらゆらと緑が踊る。

「さあ、これをどうぞ。喉の痛みが、少しは引くと思います。」



僕は名前も知らない少女から、
名前も効能も知らない薬を受け取り、
形だけの礼をいって、
痛む喉に流し込んで踵を返した。



体の中を落ちてゆく癒しを感じながら、
僕の心は次の戦いへ向かい始める。

意識がかすんでいる。

霧はまだ晴れない。



見ず知らずの僕を気遣ってくれた少女に胸をときめかせる余裕なんて、もう、ない。



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自分の誕生日の分なのに、何でこんな殺伐とした話を書いているんだろうか。
若きギリギリな戦士のお話。
自分がギリギリなせいでこんなお話ができたわけではない…はずだ。



さてさて、今日のお花は「パセリ」でございます。
花言葉は「役に立つ知識」「お祭り気分」「勝利」「祝祭」「祝宴」だそうです。
花の写真を初めて見ましたが、なかなか可憐ですね。

他の花と花言葉は以下の通り↓

野牡丹(のぼたん)…「自然」「平静」
(どっちも大事な言葉です。)

ガーベラ…順番が前後しますが(汗)、10月24日分を参照してください♪


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