遠くに在りて私を産んで、名付ける前に逝った母。
名無しの私を父の元へと連れ帰ってくれたのは、母の妹。

いつかの母を。
彼方の母を。
最愛の人を想って。

父は私に、紫苑と名付けた。



「今日はひとり?お父様は、お仕事?」
叔母は優しくたずねた。
「はい…今日は、帰らない、と。」

母に会いに行く、といっていたから、今日は戻ってこないだろう。



父にとっての最愛のものは今も昔も母。
それは、とてもいいことだと思う。



けれど、叔母が時折とても寂しそうな顔をしている。
それは、あまりいいことではないと思う。



でも母が生きていたら、父も叔母もそんな風になっただろうか?
私は時々考える。



失われて母という存在は限りなく美しくぼかされていく。



だから、私の胸の中にはいつも、喪失への憧れが消えないのだろうか?



「だったら…2人で食事にでも行きましょうか。」
叔母が微笑む。
「はい、是非。」



時々、私がなくなる日のことを思う。
その方が、いいんじゃないかと思ってしまう時もある。



失われて初めて価値を得られるような、そんな気がしてしまう。



ぼんやりしていたら、叔母がそっと頬に手を当ててくれた。
「どうかしたの?」
私は微笑む。

「いいえ、何でも…ありません。」



虫の声が、窓から忍び込んできた。

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何か途中っぽい終わり方ですが、ご容赦くださいませ。
今日のお花は「紫苑」です。花言葉は1日のところに載ってます♪
私の好きな名前TOP3を挙げるとしたら、必ず入るのが「しおん」という響き。
綺麗ですよねぇ…。

思い出を美化するというのはよくあることですが、
悪くするんじゃなければいいと思います。

他のお花と花言葉は以下の通り↓

薔薇(ばら)…いっぱいあります。とにかく。

「愛」「美」「内気な恥ずかしさ」「輝かしい」「愛嬌」「新鮮」「斬新」「私はあなたを愛する」「あなたのすべてはかわいらしい」
「愛情」「気まぐれな美しさ」「無邪気」「爽やか」

(帯紅)「私を射止めて!」
(赤)「愛情」「模範」「貞節」
(黄)「嫉妬」「不貞」
(白)「尊敬」「私はあなたにふさわしい」
(ピンク)「上品」「愛を持つ」「しとやか」
(朱赤)「愛情」
(薄オレンジ)「無邪気」「さわやか」
(蕾)「愛の告白」
(葉) 「希望あり、がんばれ」
(トゲ)「不幸中の幸い」
(ミニバラ)「無意識の美」
(バーガディー種)「気づかない美」
(ヨーク・アンド・ランカスター種)「戦い」

さすがは薔薇です。まさか蕾やら葉やら棘にまで言葉があるとは…。


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