夕暮れの陽射しに薄く目を開ける。
何時の間にか眠っていたらしい。

「お目覚めですか?」

仄かな香が漂う。

妻が、微笑んでいた。



夫婦になる前も、なってからも、この人は毎日のように私の夢に現に居る。



「ああ…、」



夢に在っても、現に在っても、私はこの人の前で言葉を失う。

何かを紡ぎだそうとすると、細く白い指が唇に触れ、
長く艶やかな黒髪をきちんとまとめた小さな頭が胸に触れる。

温度など。

感じはしないのに。

胸が熱い。



虫の声が夜を鳴らしている。

そう、もう夜になっていた。



先刻まで、確かに陽は傾きつつも其処に居たのに。



肌理の細かい頬に手を当てた。
そうするとほんのりと朱が差し、この人は目を伏せる。



慎ましさを見せるその面が、この人は1番美しい。



その貌を見た者が、私だけであればと願って止まぬが。



「旦那様?」



何故だろう。
この人を、誰かに見せたくなる。



私のものを、自慢したくなる。



小首を傾げて見上げる妻を前に、私は唇を三日月に浅く開いた。


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スミマセン、ちょっと風邪をひいてお休みしてました。
今日からまた再開です。

それにしても旦那様なんか邪悪だよ!
でもこういう雰囲気が好きなんだ。
中身はないけど雰囲気だけは出せた気がします。
でも文章は中身が大事だからね。精進あるのみ。

今日のお花は「ミセバヤ」でございます。
花言葉は「平穏」「静穏」「安心」「つつましさ」という、静かなイメージです。

花の名前がちょっと変わってますよね。
「ミセバヤ」とは「見せばや=誰に見せようか」という意味だそうで。
とても可憐なお花なので、そういう名前になったらしいですが、
名前の由来が素敵すぎてひとりで非常に盛り上がってしまいました。
これ以外のお花は菊でした。

ちなみにこの花は絶滅危惧種に指定されているそうです。


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