とにかく甘いものが好きな男だった。
砂糖菓子に更に砂糖をふりかけたり、
砂糖菓子を糖蜜につけたりしても、
平気な顔でうまい、うまいと食べてしまう、
ちょっとおかしな男だった。



そのくせ身体は痩せすぎておらず、太りすぎてもおらず、
目元は涼やか、鼻筋が通り、
きりっと引き結んだ唇は力強く、
低く良く通る声の持ち主で、
手足はすらりと長く、
俊足も強力も持ち合わせている、
そんな男だった。



この男が一声かければ多くの者が集まり、
老若男女が彼を慕い、
しかし彼はそれに驕らず、
かといって自らを必要以上に卑下することもなく、



とにかく、素晴らしい男だった。



後にも先にも、私が嫉妬したのはこの男だけだった。



そんな男が記憶の住人になって、もう数十年が経とうとしている。



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ちょっと昔風(?)の文章を意識してみました。

今日のお花は「唐辛子」です。
花言葉は「旧友」「雅味」「嫉妬」ということで…「雅味」だけ抜けてますね。
「オレの誕生花、唐辛子なんだぜ!」ってちょっといいなぁ。

他のお花&花言葉はガーベラ(10月12日参照)と百合(10月4日参照)です。


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