『愛してるって百回言って』番外編エッチそのニ キスマーク編 * * * 「ああ、ちょっとやりすぎちまったな」 お兄ちゃんがあったかいタオルで僕の首をポンポンって叩く。 「なあに?」 「じっとしてろ」 温かくって気持ちいいんだけど、ちょっとくすぐったくって身体をよじったら、ぎゅって押さえつけられた。 「何してるの?」 「キスマーク付いたから、消してるの」 「キスマークって、口紅の?」 「俺が口紅塗ってるか」 「じゃあ何で付いてるの?」 お兄ちゃんは僕の顔を見て、そしてちょっと吹き出した。 起き上がって、そして、僕の手を引っ張った。僕の身体も持ち上がった。 ベッドにペタンって座ったら、机の上の鏡を取ってきてくれて 「ほら、これ」 僕に向けて差し出した。 鏡の中の僕は、何だかボウッとはれぼったい変な顔をしてる。恥ずかしいから顔は見ないで、お兄ちゃんがこすっていた首のところを見たら、赤くなっていた。 「虫に刺されたみたい」 「誰かに聞かれたら、そう言うんだぞ」 お兄ちゃんは、クスッて笑った。 「これどうやったら、付くの?」 「チュ〜ッてキスしたら付くんだよ」 「ホント? やってみていい?」 「いいよ」 お兄ちゃんは面白そうに目を細めた。 僕はお兄ちゃんに近寄って、肩にチュウウウウッってキスした。 「付かないよ?」 一生懸命吸ってみたけど、なんにもなってないよ。 「そこは、ダメだな。ほら、ここでやってみろ」 僕の前に腕を出して、ひじの内側を指した。 ちゅうううぅっ とうもろこし食べるみたいに両手で持って、強く吸ったら、 「あ、赤くなった」 赤い、っていうか赤紫、の点ができた。 「もう一回、いい?」 返事を待たないで、もう一回やった。 ちゅううううぅぅぅぅぅっ 「あ、できた」 もう一つ、一回目のよりも大きい赤い点ができた。 おもしろーい。 もう一度やろうとしたら、 「これ以上は、ヤメロ」 「タッ」 頭を叩かれた。 「俺の腕、シャブ中みたくするなよ」 お兄ちゃんが、ひじの内側をこすりながら言う。 「シャブチュウって何?」 「麻薬中毒のこと」 「中毒……」 中毒って言われて、考えた。 「僕も、中毒なのかも」 「なに?」 「だって、中毒って、ダメだってわかっているのにやめられないことでしょう?」 麻薬中毒とか、アルコール中毒とか。 「僕……僕ね、お兄ちゃんとこんなことするのって、本当は、いけないことだって思うのに、やめられないんだもの」 「智也」 お兄ちゃんが驚いたように目を見開いて僕を見つめる。 そして、ぎゅって抱きしめられた。 ちょっと、苦しい。 お兄ちゃんは、僕の大好きな声で、耳元で囁いてくれた。 「だったら、俺も智也中毒だよ」 お兄ちゃんの声、ゾクゾクした。 「二人ともなの?」 僕も、お兄ちゃんに抱きついた。 「うん。ゴメンな」 「何で謝るの?」 「ゴメン」 お兄ちゃんの体重が乗っかってきて、僕はまたベッドに倒れた。 「あ、ん……」 お兄ちゃんの唇が、僕の唇をふさぐ。 中毒患者でも、お兄ちゃんも一緒なら、いいや。 そういえば、口にもいっぱいキスしているのに、どうしてキスマークつかないのかな。 |
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