突発SS七夕記念

実際の和亀の話とは関係ありません(笑)




夜空に輝く天の川のほとりに、天帝の娘で織姫と呼ばれる、それはそれは美しい天女が住んでいました。織姫は、天帝のいいつけを守って、毎日機織りに精を出していました。
織姫の黄金の右腕から織り出される布は、五色に光り輝く不思議な布です。その美しさ、見事さは、向かうところ敵なし、って別に戦うものでもないのですが、とにかく天下一品の布でした。
天帝は、そのようにすばらしい腕を持った娘が、年頃なのに化粧っけもなく彼氏の一人もいないのを心配して、ある日見合いをさせることにしました。
「いいよ、親父。俺、別に今の状況で十分満足してんだからさあ」
織姫は乗り気ではありません。
「そういわずに、牽牛というその青年は、たいそう真面目な働き者だそうだ」
「けっ、面白みの無さそうな奴。見るだけだぜ。俺はまだ結婚なんてしねえからな」
ところが、初めて牽牛を見た織姫は、ひと目で恋に落ちてしまいました。
牽牛の長身も、男らしい端正な顔も、そして爽やかで優しそうな笑顔も、織姫の理想ピッタリです。見た目よりちょっと、小心者な性格も『俺様』体質の織姫には、むしろ好ましいものでした。
「親父っ、俺、牽牛と結婚する」
手のひらを返して、宣言すると、さっさと一緒に暮らし始めました。

そして結婚してからの織姫は、まったく仕事をしなくなりました。
「織姫、機を織らなくてもいいのか」
牽牛が心配そうに織姫の顔を覗き込みます。
「いいんだよ。それより……」
「あっ、こら……」
ふふっと笑って、織姫が牽牛の首に腕を廻し、ついでに足も牽牛の腰に絡めます。
「だめだよ、織姫」
「やだ、もう一回……」
口づけをねだるように唇を寄せる織姫の、まさに天女の美しさ。牽牛は到底逆らいきれず、今日何度目かのえっちに入ろうとしたところ……
「いいかげんに、せんかいっっ」
天帝の怒号が響き渡りました。
「て、天帝様っ」
牽牛は青褪めて平伏します。織姫はその白い肌を隠しもせずキッと睨みあげると怒鳴り返しました。
「邪魔すんじゃねえっ」
天帝は呆れて物も言えません。
しかし、言わねば話になりません。気を取り直して言いました。
「娘よ、はたを織ることが天職という事を忘れたか。再び、天の川の岸辺で機織りに精を出しなさい。心を入れ替えて、一生懸命仕事をするならば、一年に一度七月七日の夜に牽牛と会うことを許してやろう」
二人は、天の川の東と西の両端に引き離されてしまいました。

「ふざけんなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ」

織姫は叫びましたが、天帝は聞く耳持ちません。
「ちゃんと働かないと、一年に一度も会えなくするぞ」

織姫も牽牛も一年にたった一度、七月七日の夜に会えることだけを楽しみに仕事に励むのでした。

けれど、その七月七日に雨が降ると、天の川の水嵩が増して織姫は向こう岸に渡ることができません。向かうところ敵無しの織姫ですが、水は苦手でした。
「これじゃ、いけねえじゃん……」
織姫が唇を噛んで、拳を握り締めていると、どこからとも無く一羽のカササギが現れました。
「どうしたの?織姫」
坊ちゃん顔のカササギに、織姫はかくかく云々事情を話しました。
「……って、信じられないくらいひでえ奴だろっ!」
殆ど、天帝の悪口でしたが、カササギはちゃんと織姫の気持ちを汲み取れました。
「ようは、あちら側に行きたいのですね」
「連れてって、くれんのかっ?」
「はい」
カササギが大きく羽根を広げると、カササギの仲間たちが集まってきました。翼と翼を広げて重ね合わせて、天の川に白い橋を架けてくれます。
「さんきゅーっ」
織姫は、喜び勇んで橋を渡ります。
天の川の西には、愛する牽牛が待っています。
「待ってろよっ、牽牛っ」
織姫は叫びました。
「今夜は、寝かせないぜえぇっ」
カササギは、感動しています。
「愛だね。じーん」

2002年7月7日

キャスト
織姫……海堂   牽牛……高遠   天帝……三好   カササギ……上田

突発SSの部屋に入れるべきだった(汗)




HOME

小説TOP

NEXT