企画第一弾《私の好きなキャラ投票》ツヨ君第一位記念vv

ちなみに二位が海堂、三位高遠、以下 駿、ジル、三好……と続きました。
色々なコメントありがとうございます。全て保管させていただきました。
手前味噌な企画にご協力いただけて感激です。
これからもよろしくお願いします。
というわけで、公約通り、上位三人の出でくるSS







「ワカメサイ?なんだそりゃ??」
強は大きい目を丸くして、幼馴染の飯田利一の顔を見た。利一は、チケットらしい紙をひらひらさせて、
「ほら、俺の同い年のいとこが都立高校行ってんじゃん、そこの文化祭だよ」
「ああ、ワカメ祭か」
「俺のいとこが、なんかイベントに出るらしくって、投票してくれって、模擬店のチケット沢山くれたんだよ」
「投票?なんの?」
「なんかよく知らないんだけど、来りゃわかるからって言ってて。まっ、人気投票みたいなもんじゃねえかな、ミスター和亀高校とか」
「いとこ、そんなカッコいいのか?」
「やっ、それは……」
「お前のいとこだもんな」
「どーゆー意味だよっ」
「へっへへぇ」
笑う強をポカリと殴って、利一はコホンと咳払いして
「泉も誘ってくれよ」
上目遣いで言う。
「あいつ、沢木と先約あるんじゃねえかな」
「だって、大学、夏休み前の試験シーズンにはいって忙しいって言ってたじゃねえか」
「それは、春日の話。沢木はしらねぇよ」
「同じだよ」
「まあ、わかった。聞いてみるよ。俺だって、あいつが一緒だったらそのほうが楽しいし」
「だろ?だろ?」
嬉しそうな利一がちょっと気の毒になる強。この幼馴染は、相変わらず、泉のことが好きらしい。
(沢木に勝てるはずねえのに……)
思わずじっと見ると
「なんだよ?」
利一がきょとんとする。
「幸せになれよ、リイチ」
強は、利一をぎゅっと抱きしめた。
「な、ななな、なんだよおっ」
利一は、顔を赤くしてジタバタした。



都立和亀高校。和亀祭当日。
「えーっ、なんで俺が?」
「しょうがないだろう?ミス和高の優勝者には、前年のミス和高が花束を渡すって決まりなんだから」
三白眼になって唇を尖らす海堂を高遠がなだめている。
「去年そんなことなかったぞ」
「それは、川原が怒って、すっぽかして帰ったから……」
「だったら、俺もすっぽかしていいじゃねえか」
「もう、大人げないこと言うなよ、海堂」
そこに、下級生数人が飛んでくる。
「あっ、海堂先輩、こっちです」
「お席作りましたから」
「だから、俺は、出ないんだから、関係ないってのっ」
「ささ、こちら、こちら……」
海堂の抵抗を無視して、下級生たちは海堂と高遠を取り囲むように体育館の段上に連れて行った。
来賓審査席に並んで『前年度ミス和高スペシャルシート』が用意されている。
それを見て、海堂と高遠は、一瞬、言葉を失った。
「………………」
「………………」
「こちらが、お二人の席です」
二年生のミス和高実行委員が、にこやかに右手のひらで指し示す。
「お二人って……なんで、ラブシートなんだよ」
高遠が呟くと、
「前年度ミス和高のエスコート役ですよ。なにしろ、先輩達は、ここ都立和亀が応援して守るべき名物ラブラブカップルですからね。って、まあ、生徒会の先輩に、そう言われていて……」
その生徒は、てへへと頭を掻いた。
「帰る」
高遠が踵を返すと、その手を海堂がガシッと掴む。
「なんだよ、ずい分態度違うじゃねえか、高遠」
凄んで見せながら、海堂、口許が緩んでいる。
「嫌だ、絶対っ、嫌だ」
人一倍恥ずかしがり屋の高遠、渾身の力で海堂を振り払うが、小さくても海堂、信じられない握力で高遠を掴んで放さない。
(万太郎たちに見せ付けるチャンスだぜ)
海堂は、むしろ乗り気になった。
「しょうがねえ、付き合ってやるぜ」
「やめろっ、海堂っ」


* * *

「泉も来れてよかったな」
「ツヨくんと、リイチくんと三人で出かけるのって、中学校以来だね」
泉も嬉しそうだ。誘ってよかったと強は思った。
「二年C組……あっ、こっちだ」
利一がいとこを訪ねて教室に入ると、まさに大騒動の真っ最中。
「いででででてててて…………」
「うおっ、どおしたっ!ポンッ!!」
床に転がる生徒に利一が駆け寄るところを見ると、そのポンと呼ばれた生徒が利一のいとこらしい。
「大丈夫かっ」
「腹が……」
クラスメイトたちも周りで騒然としている。
「盲腸じゃないか?」
「救急車、呼べよ」
「おい、どうすんだよ、ミス和高」
急病人を前にして不謹慎な発言のようだが、仕方がない事情があった。
「す、すまない……」
ポン(あだ名)が、苦しそうな声を出す。
「こんなときに……」
「そうだぜ、飯田っ、俺たちの組織票、どうしてくれんだよ」
横にすがり付いてクラスメイトの一人が、声を震わせる。
「か、影武者を……」
腹を押さえて、ポンが言う。
「俺が、倒れたことは、秘密にして……だれか、俺の代わりに……」
「わかった、身代わりをたてるんだなっ」
「うむっ」
芝居がかったやりとりを、強と泉は、呆然と見ている。
泉は、事情がよくわからないのに、涙目だ。
一方、強は―――
(これって、あれだな。伊達政宗だな……)
影武者は武田信玄だ、と、教えてくれる春日はここにはいなかった。
「リイチ、後を頼むぜ」
なぜかポンは、その場に居合わせてしまった利一に後を頼んだ。
影武者に立てるのなら、多少は血のつながりのあるいとこが良いと判断したもの。
利一は何が何だか分からないまま、後を託され、頷いた。
「わかった!後は、任せておけっ」
「おおおおおおっ」
二年C組に感動の拍手が巻き起こる。

「えええええっっっ!!」
利一の叫び声。
「嫌だ、無理だ、ぜぜ、絶対、無理」
よくわからない人気コンテストが女装の『ミス和高』だと聞かされて。
「大丈夫だよ、飯田君のいとこ君」
「そうだよ、今回俺たちは、必勝作戦として、今までにない大がかりな組織票を集めているからね、飯田君のいとこ君」
「やっ、紛らわしいから、飯田でいいぜ、リイチでもいい」
「じゃあ、説明するとね……」
ポンのクラスメイトは、ミス和高のトトカルチョを利一たちに説明し、そして自分たちが親戚、友人かき集めて、例年にない大量票をポンのために準備していることを話した。
ちなみにポンが、利一たちを呼んだのもそのため。
「だから、飯田君の名前で出れば、それだけで優勝できるんだよ」
「そんな、簡単なモンなのか?」
話を聞いていた強が、口を挟む。
「だって、組織票ったって、過半数じゃねえんだろ?ものすごい美人が登場したら、どうすんだよ」
「それは、一応考えたよ」
二年C組の委員長が、眼鏡の位置を直しながら言う。
「もともと、一番手ごわかった海堂先輩、あっ、去年の優勝者なんだけどね。その人が今年出ないって聞いて計画したんだ。もう一人手ごわい先輩はいるんだけど、その人は性格に難があるからコアなファンしかいなくって。毎年、獲得する票の数って大体決まっているんだよ」
「ふうん」
強は頷いた。
しかし、利一は暗い顔。
「だめだ……もし、万が一、その場にいた人たちが、組織票を上回るくらい誰かに投票しちまったら……」
拳を握り締めて、叫ぶ。
「ポンにあわせる顔がねえっ」
「んー、まあねえ」
委員長も、うつむいて腕を組む。
「そうだ」
利一がハッと顔を上げた。
「泉、出ろよ。泉なら、組織票なんかなくっても、優勝するぜ」
「えっ!」
突然話をふられて、青褪める泉。
二年C組の視線が集中。
「本当だ。こんなに綺麗だったら」
「間違いなく優勝だよ」
「これなら、組織票もいらなかったかも……」
「うん、うん」
口々に言う野郎どもの前で、泉、大泣き。
「嫌だ、無理だよ、やめて、そんなの……」
ボロボロと玉の涙を零す泉を見て、強が叫ぶ。
「ああ、もう、やめろよっ、泉をいじめんなっ」
「いや、苛めているわけじゃ……」
「泉が、出るくらいなら、俺がでるぜっ」
思わず言って、はっとする。
しかし、後の祭り。
「そういえば、あまりに雰囲気が違うからわからなかったが」
「同じ顔だよ」
「化粧をすれば、いけるかも……」
「うん、うん」

しまったと頭を抱える強の横で、泉はお約束のようにポロポロ泣いている。
「ごめんね。ツヨくん……」


* * *

「さて、次は、二年C組の飯田本一(もとかず)君でえす」
司会の声に、舞台上を進むのは強。
ポンが着る予定だった大振袖で、静々歩く。
ちなみにポンのあだなの由来は『本一』の『本』からきている。もう一人のいとこにチィちゃんがいるのもお約束だ。
さて、そんなことはどうでもいい。
強の登場に、会場は水を打ったように静まり返った。
二年C組の委員長は、唇を噛んだ。
「しまった、美形過ぎて目立ってしまったか?」
スパイが美形で目立ちすぎてはいけないように(←青池保子の漫画で勉強)影武者も、あんまり目立ってはいけない。だから、慶次郎は前田利家の影武者が務まらなかったのだ、ブツブツ……と呟く委員長。
利一、泉、そして二年C組の連中が息を飲んで見つめる中、突然大きな拍手が沸いた。
「可愛い――――っ」
「きれ――――いvv」
会場が大いに沸く。
利一が、ほっとした瞬間、甲高い声が響き渡った。

「ちょおおおおっと、まったあああっ!!!!!」

舞台の下手から、えらく派手で綺麗な女の子が登場した。
いや、ミス和高の出場者なら女の子のわけがない。
ゴシックロリータ、略してゴスロリの衣装に身を包んだジル川原。
腰に手を当てて、叫ぶ。
「その飯田本一は、偽者よっ」
「なっ」
強、顔を引きつらせながら
「何を言う、俺は、じゃない、ワタシは、飯田本一だぜっ、じゃなくて、本一よっ」
いや、男言葉でいいんだよ、強。けれども、妙な女装でその上他人に成りすましているという混乱から、オカマ言葉を使ってしまう。
「ふふん、本当にあんたが、飯田本一だって言うんなら、自分の血液型と、誕生日を言って御覧なさいっ」
「いっ?」
「自分のなら、言えるでしょ?」
ゴスロリ衣装の懐から手帳を取り出すジル。恐るべし、ミス和高出馬にあたってライバルの調査に抜かりなし。
「それは……」
強は、会場にいる利一を見た。
利一が頭の上で両手で輪を作っている。
大昔のテレビの『友達のワッ』てな感じだか、ここでの意味は違うだろう。
「O型っ」
「誕生日は?」
また、チラリ見ると、利一が両手の指を一本ずつ立て、その隣で、利一に言われたらしい泉がVサイン。
「十一月二日っ!」
「ふうん」
ジルは、切れ長の目を細めた。
「じゃ、何歳までおねしょしていたか?」
(おねしょお?)
強は、また利一を見た。指が三本立っている。
「三つまで」
強の言葉に、ジルは
「えっ?三つ?」
驚いた声を上げる。
「小学校三年生でしょ?ネタはあがってんのよ?」
「うっ、しまった、そうだ、三年生だ」
強、慌てる。
「小学校三年生だよ」
言い直した強に、ジルは高らかに笑って人差し指を突きつけた。
「ほほほほほ、ひっかかったわね。偽者」
「なっ、何っ?」
「小学校三年生なんて、嘘よ」
「いっ?」
「大体、本人だったら、そんな大きくなってまでおねしょしてたなんてこんな大勢の前でいえる?」
「あああ……」
強は、がっくりと両手を床についた。

その一部始終を見ていた海堂が、隣を向いて言う。
「なあ、高遠、あいつ面白いから、俺、あいつに投票していい?」
「いや、偽者だって、言ってるだろ?」



「さあ、本当の名前を名乗りなさい。どこの誰よ?」
ジルの詰問に、強は開き直った。
「ばれちゃあ、しかたねえや。俺は、羽根邑強。百万石学園の二年だぜっ」
何故か、大振袖の片肌脱いで名乗りを上げる。
「百万石……『学園』?」
ジルの目が、きらりと光った。
「ねえ、学園ってことは、バロック調の全寮制の寮だったりする?」
「やっ、寮は、寮でも和風な感じ……」
「生徒会はものすごく権限を持っていたりする?」
沢木と春日を思い出し、
「まあ、去年まで……そうだったかな」
へどもど応える。
「修学旅行は、当然、海外で……」
「いや、うち、学長が海外嫌いで……」
「秘密クラブとかあるのよねっ?」
「って、お前、人の話、聞いてねえなあっ!」
強、ついには叫ぶ。
ジルは、頬を紅潮させて強にすがりつく。
「当然、全校生徒の三割はホモよねっ」
「なんなんだよ、こいつ―――――っ」

去年に続いて、またも途中中断のミス和高。
来年も果たしてやるのかどうか、関係者一同、頭を抱えたのだった。


「なあ、俺、やっぱりあいつに投票する」
「だから、だめだってば」







END


キャラ投票いただいた皆様、ありがとうございました。




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