番外編 
《沢木×泉のお初もの》
ご注意!これまたちょっとエロあります。ちょっとだよね?



「ヤチ、金貸せ」
春日の部屋のドアを開けながら、沢木が言う。
「来月、バイト代入ったら、直ぐ返すから」
「いいけど」
春日は机に向かっていた椅子を少しだけずらして振り返った。
「お前、夏休みバイトなんかしてたの?」
「ああ、アメリカ往復で金使ったからな。あの時は家族カードで払ったんだが、結局、自分で埋めなきゃいかんし」
(受験生って自覚ないのか?)
春日は眉を顰めた。
自分も、強が帰ってくると聞いて、地元予備校の現役対象の夏期講習をぶっちぎって寮に戻ったのだが、沢木のそれは常軌を逸していると思った。それでいて、この男は夏休み明けの模試では自分と遜色ない結果を出すのだろう。春日はちょっと不愉快になった。
しかし、親友が困っているとしたら、助けてやるのが道理だ。
「で、チケット代埋めるのにあといくら足りないんだ?」
「いや、それはもう十分埋まっているんだが……」
春日は、沢木の言葉に首をひねった。
「ホテル代が、ちょっと足りなさそうで」
「は?」

* * *
「泉。会いたかった」
「敦先輩……」
沢木の部屋で、二人は熱く抱き合って繰り返し口づけを交わしている。
沢木の雄はさっきから痛いくらいに反応しているのだが、とりあえずキスより先のことはしないでいる。『羽根邑家双子の掟その七』に縛られているわけではない。両親とのご挨拶は済んだのだから。
沢木には野望があった。
(泉のお初をいただくのは、一生の思い出になるような場所!)
思案の結果、横浜の海の見えるホテルに決めた。
「泉」
「はい」
「明日、デートしよう」
「え?」
「中華街行って、ご飯たべよう」
「ええー?嬉しい」
頬を染めて花のように微笑む泉を見ながら、沢木も微笑んだ。
(中華もいいけど、泉もね♪)

* * *
「お腹いっぱい。先輩、ご馳走さまでした」
予定通り中華街で食事をして店を出てきた二人。
「その先輩って、本当に止めてくれないかなぁ。なんか、体育会の後輩にご馳走したみたいで……」
「え?でも……」
「敦って呼んでくれ」
「……呼び捨ては……」
「うーん。じゃあ、呼びやすい名前で……『先輩』じゃなくて」
「えーと」
泉は困ったようにうつむいた。沢木が見守る。
頬を染めて、じっと考える泉。
(強が、ツヨくんだから……)
「……アッくん?」
おずおずと上目遣いで見上げる。
(アッ、くん……)
沢木の心臓直撃。
「あ、ごめんなさい、やっぱり」
赤い顔で、慌てて言い直そうとする泉を抱きしめて、沢木は
「いい。それでいい」
鼻血が出そうになっていた。

その後、中華街で売られているチャイナドレスに沢木が密かに妄想(泉に着せて×××)を膨らませたりしながらも、表面的にはごく普通のラブラブデートが続いた。
山下公園などお決まりのコースを周って、沢木は腕の時計を見た。
「もう、大丈夫だな」
沢木の瞳がキラリと光る。
「?」
沢木の呟きに、泉が軽く首をかしげた。
「行こう、泉」
泉の手をとってずんずん歩き出す沢木。
時刻は15時をまわって、チェックイン可能となっていた。

「え?ここって……」
沢木がつれてきた場所が、某高級ホテルだと知って泉は驚いた。
「うん、ちょっと待ってろよ」
沢木は平然とチェックインして、部屋のカギをとって来る。
(今日は、ここに泊まるのかしら)
泉の胸はドキドキして、エレベーターの上昇するのに合わせて血圧も体温も上昇しているようだった。
ふわふわする足取りで、沢木に連れられ部屋に入って、泉は目を瞠った。
「す、ごーい」
羽根邑家の家族旅行はいつも旅館だった。両親の趣味で、なになに亭とか、なんとか楼という高級旅館ばかりだったが、当然和室で、こんなホテルは初めてだ。
泉は、急に好奇心でいっぱいになってクローゼットやキャビネットを開いて見る。
「あ、この中にテレビがあるんだ。これは冷蔵庫だ」
振り返って、ニコッと笑う。
「なんか、いっぱい入ってます」
沢木はそんな泉に目を細めながら、寮の部屋じゃなくてここにしたのは大正解だったと内心ほくそえんだ。

「すごい。海が見える。きれい」
カーテンを大きく開いて窓の外を眺める泉に、そっと近寄って、沢木は後ろからぎゅっと抱きしめた。
「あ…」
泉がびくっと振り返るのを、そのまま胸の中に包み込んで、肩口に口づけながら言う。
「夜まで、待てない」
「えっ」
泉はたちまち体温が上がってしまった。

「泉、愛している」
泉の顔を上向きに持ち上げると、沢木は激しく口づけた。
「あ、んんっ……ん」
舌を絡めてきつく吸い上げると、泉は沢木の身体にしがみつく。そのままベットにそっと押し倒すと、泉がはっとしたように身を捩った。
「ま、待って、えっと……」
「何?」
これ以上、一秒も待ちたくない沢木。
「シャワー……あの、汗かいてるから……」
夏休みの最終週。天気もよければ、当然汗もかいている。けれど、沢木は
「あとで、一緒に浴びよう。俺は、このままがいい」
すっかりケモノ。
「あ」
シャツをはだけられて、泉が恥ずかしそうに顔を横に向ける。
沢木は、滑らかな胸に頬ずりをすると、その感触を楽しんだ。目の前に、泉の胸の突起がある。桜貝のようなそれをそっと唇で摘むと泉は切ない喘ぎをもらした。
「ああっ…ん」
その声が、沢木の股間直撃。すっかり硬くなったそれを泉の腿に押し付けながら、沢木は執拗に胸を貪る。耐えられないほどの快感が泉を襲う。
「あっ、や…ん…ん…………」
泉は、自分の親指の付け根を噛んで、声を殺した。泉の瞳から、涙がぽろぽろと流れ落ちる。
沢木はそれに気づいて、そっと身体を起こすと泉の指を唇から外した。
泉の噛んでいたところにそっと口づけて、それから、一本一本の指先に口づけながら言った。
「声は、我慢しちゃダメだ」
「え?」
涙に潤んだ瞳で、沢木を見返す。
「泉は初めてだから、言っておくけど、セックスの時、声は出さないとダメなんだよ」
「そう、なの?」
小さい声で、聞き返す泉。沢木は肯く。
「気持ちよかったら『いい』ってはっきり言うものなんだよ」
これは、まったく沢木の趣味だ。けれど、泉は素直さにかけては、天然記念物なみだった。
「わかりました」
恥らいつつも、こっくり頷いた。


「ああっ、あん、いい、いっ……あん、や、あっ、いい、です、んっ」
(……ヤバイ、泉、お前……)
「ああん、あ……あっくん……いいっ」
沢木の愛撫に応えて、泉が甘い嬌声をあげる。
全く素直な反応だった。
おかげで、沢木はまだ挿入もしていないのに、声だけでイかされそうになっている。
(俺が先にイくことだけはならん)
沢木自身の先が、泉の腿に触れて先端から雫をたらしている。
とにかく先に、泉をイかせなくてはという使命に燃えて、沢木は泉自身を口に含んだ。
「やあっ……ああっ」
突然の刺激に、あっけなく泉は果てた。沢木はよくわからないが妙な達成感で、その精を飲み下した。
「あっくん……飲んじゃったの?」
涙を浮かべた泉が、真っ赤な顔で沢木を見上げる。
沢木は、濡れた唇をぬぐって、泉にチュッと軽くキスして言った。
「愛し合っているんだから、当たり前なんだよ」
「そう、なの?」

泉がおずおずと沢木の雄に唇を近づける。
沢木は、自分のグロテスクなそれと天使のような泉の顔の対比に、目眩がしそうになった。
泉はそっと唇をつけて、口を開くと、ゆっくり飲み込もうとして、その大きさに先の方しか入らず、困ったように沢木を見上げた。
(うっ)
目が合った瞬間、沢木はイってしまった。
「あっ」
突然の放出に、泉が思わず唇を離すと、沢木の白濁したそれが泉の顎や喉にかかった。
(顔射っ?!)
沢木は、びびった。
こんなに可愛い清らかな泉の顔を汚してしまった。
泉は、困ったような顔で、じっと沢木を見詰める。顔に精液をつけて……
(ヤバイ。めちゃくちゃ興奮する)
不意に、ぽろぽろと泉が泣き出した。沢木が慌てる。
(やっぱ、初体験で顔射はまずいだろ、自分っ)
「い、泉……」
ごめんと言おうとしたら、先に泉が謝ってきた。
「ごめんなさい。あっくん」
「え?」
「僕、ちゃんと飲めなかった……」
「………………」
「……ごめんなさい……」
ベッドの上で横座りしてしくしく泣く泉。
沢木は、たまらなくなってその華奢な身体をきつく抱きしめた。
そして、考えた。
(……つぎは、何を教えようかな)
この日から泉は、沢木の従順な教え子となった。




エロというより、お笑いでしたね(笑)




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