やって来たのは2頭のトナカイ、そして、白い髭の老人。

老人は、さも驚いたという顔でゆっくり店の中へ入ってくる。

そして僕達は、もっと驚いて、全員で口をポカンと開けたまま、固まってしまった。

もっとも、キャディーさんだけは何食わぬ顔で老人に駆け寄ると、

心得たように席まで案内していた。

 

「ボギーさん、皆さん、私達の手紙を読んでくださって、本当にありがとうございます!」

「今日は、サンタさんにプレゼントをしたくて」

「プレゼントを配りにゆく前の2時間、パーティを楽しんで欲しくて」

「だから、こうして此処へ来たんです!」

 

交互に喋るトナカイは、双子みたいだった。

きっといつもなら、喋るトナカイが現れたら驚くんだろうけれど、

今日の僕達は違和感無く受け入れていた。

「まさか、本当にトナカイだったとは・・・」

隣でポツンと言った兄さんは、咳払いをすると、いつもの笑顔で老人とトナカイに話し掛けた。

「いらっしゃい!ようこそ、『ホール・イン・ワン』へ!」

そうだ。こうしてはいられない。時間は2時間と限られている。

この2時間、お客さんにはめいっぱい楽しんでもらわないと!

 

「ありがとう、皆、ありがとう」

白い髭の老人、いや、サンタ・クロースは、本当に嬉しそうに笑うと、僕達1人1人を抱き締めた。

何だか子供の頃に返ったような気になって、僕も兄さんも、ライゼもジムも、それからキャディーさんも、

思い切りはしゃいだ。

店内の明かりは輝きと暖かさを増し、鈴が鳴り響き、途切れる事無く歌が聞こえる。ダンスの足踏みも聞こえる。

歌の合間に聞こえるのは、笑い声。

幸せで満たされた時間は、何時までも続くような気がした。

 

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