『ホール・イン・ワン』2分の1店主 ボギー様へ
こんにちは。私はトナカイです。
実は、クリスマス・イヴの夜10時から12時までの2時間、
お店を貸して欲しいのです。
もしよろしければ、イヴの夜10時までに、お店の南の窓辺に、
ホワイトチョコを置いてください。
そうしたらうかがいます。
もし、だめなら、何もしないでけっこうです。
でも、できれば、お願いします。
けっして、悪い事はいたしません。
どうか、おねがいします。
「・・・何だい、これ?」
呆気に取られた顔のまま、僕は兄さんを見つめた。
「数日前に俺の部屋に届いていたんだ。最初はいたずらかと思ったんだが、どうにも気になってな」
そうか。それで、ここ数日悩んでいたんだ。
「もっと早くに言ってくれれば良かったのに!」
非難がましい目をする僕に、兄さんは困った顔で微笑んだ。
「ああ、それは済まなかったと思っている。だが、どうにも相談し難くて」
そこで僕達は、開店までの間、しばらく頭をつき合わせて考えた。
「『私はトナカイです』ってのが、怪しいと言えば怪しいんだよなぁ・・・」
声に出して言った僕に、兄さんが同意を示した。
「でも、何だか一生懸命書いてる感じ、しませんか?」
ライゼは好意的だ。
「ジムはどう思う?」
そこで兄さんが尋ねると、ジムは素晴らしい笑顔をいつも以上に輝かせて答えた。
「この手紙に悪意はありませんよ!それに、何だかワクワクしませんか?
クリスマス・イヴに謎の手紙!窓辺のホワイト・チョコレートが合図だなんて、
素敵な事極まりないかと、自分は思います!」
ロマンチスト・ジムの台詞(性格には笑顔)が決定打となり、僕達は店の閉店時間を早める事にした。
「クリスマス・イヴだってのに、閉店時間が早いんだな?」
「ええ、まあ、クリスマスですから、夜は家でのんびり過ごすのもいいんじゃないかと・・・」
「2人共、いい人でもいるの?」
「まさか!違いますよー!」
「メリー・クリスマース!わはははー!」
「あ、子爵!来てくださったんですか!?」
お祭り気分で浮かれる人々の間を走り回りながら、言葉を交わす。
特に文句をつける事も無く、お客達は閉店時間近くになると、肩を組んだり、
腕を組んだり、歌ったり、笑い合ったりしながら、1人、また1人と帰っていく。
そして僕達は、謎の手紙の人物(?)を迎える為に、店を掃除して、残しておいた料理やお酒をテーブルに並べ、
飾りを付け直した。
「そう言えば」
準備が一段落したところで、兄さんがジムとライゼを呼んだ。
「ほい、2人共、メリー・クリスマス!ボギー&バーディ・サンタからプレゼントだ」
ライゼには、白いマフラーと手袋を、そしてジムには、トレーニング用に砂を詰めた樽(20kg)を
それぞれ贈ると、2人共、思っていた以上に喜んでくれた。
今年1年の感謝と労いを込めて、皆で乾杯をしたその時、彼等は来た。
「こんばんは!皆さん、今日はありがとう!」