「なぁ、バーディ」
兄さんが声をかけてきたのは、クリスマス・イヴの開店準備中。
店内の装飾もすっかり終わって、後はお客さんが来るのを待つだけの時間に、
兄さんが一通の手紙を持って来た。
「どうしたんだい?」
僕は店の中央に置かれたツリーにぶら下がるサンタ・クロースの人形の位置を直しながら、
何気無く振り向いた。
「実はな、今日は店の閉店を夜の10時にしたいんだが」
「ええ?」
1番忙しくなるであろうこの日に、一体何を言い出すのかと思えば。
「本気で言ってるのかい?今日、明日は真夜中の12時まで営業するぞーって、
張り切っていたのは兄さんじゃないか」
突然の申し出に、僕のみならず、ジムやライゼも驚いて、側へ寄ってきた。
もっとも、クリスマス限定仕様のクリスマス・リースを模した首輪(ライゼからのプレゼント)と
赤いマント(僕と兄さんからのプレゼント)、そして王冠(ジムからのプレゼント)を身に纏って、
悠然とポーズを取ったまま、ちらりと僕等に流し目をくれただけだったけれど。
「うむ。理由はキチンとあるんだ。これを見てくれ」
そう言って兄さんが差し出したのは、随分と可愛らしい封筒だった。
薄桃色の地に、小さな花があしらわれた、女の子が好きそうなデザインだった。
「まさか、兄さん・・・」
僕は或る事を考えて、驚きに目を見開いた。
「ボギーさん、デートですか!?」
同じ事を考えたらしいライゼが、後を引き継いでくれた。
「それはスゴイ!おめでとうございます!」
そしてジムが決め付けてくれた。
しかし。
「違うぞ。中身を見ろ」
当の本人があっさりと否定してくれた。
言われるままに、僕は封筒から同じ柄の便箋を取り出すと、慎重に開いた。