最近、気になっている事がある。
それは、兄さんの事だ。
生まれてこの方およそ悩みというモノを抱えている様子を見たことが無い兄さんが、
ここ数日の間、開店前の店のスツールに腰掛けて、ぼんやりしている。
明らかに「俺は悩んでます」って顔で。
キャディーさんが足に噛みついても気付かないし、ジムの笑顔にも反応しないし、
ライゼの心配そうな声も、全く聞こえてないみたいだ。
「あのさ、兄さん・・・」
こうなると、やはり弟の僕が声をかけない訳にはいかない。
「うん?何だ、バーディ」
ふい、と顔を上げた兄さんに、コーヒーを差し出しながら、
なるべくさり気無く尋ねてみる。
「何か、悩み事でもあるの?最近・・・」
駄目だ。やっぱりストレートに聞いてしまう。
「うむ。ちょっと、な」
そう言うと兄さんは、おもむろに『ジングル・ベル』を口ずさみだした。
「急に何だよ。クリスマスの歌なんて・・・」
悩み事の内容を聞こうとした僕を振り返ることもせず、兄さんは歌いながら
外の空気を吸いに行ってしまった。
クリスマスがどうかしたのだろうか?