ボギーさん達のお父さんのものだったというタキシードに身を包み、髪型を整え、

ついでに真っ赤な薔薇の花束まで抱えたバーディさんは、いつもの彼とは270度くらい違って見えた。

「スゴイ!バーディさん、すっごく格好良いですよ!!」

「はい!惚れ惚れします!」

姿身の前で僕とジムに絶賛され、何時の間にか現れたキャディーさんに体当たりを喰らい、

バーディさんは立ち尽くしていた。

「うんうん、流石は俺の弟!バーディ!後はクリスティーの所へまっしぐらだ!」

嬉しそうなボギーさんを振り返り、バーディさんが何かを言おうとする。

「あの、兄さん・・・」

しかし、ボギーさんはすっかり浮かれてしまって、聞いていない。

「ボギーさん、バーディさん、何か言いたいみたいですよ?」

仕方なく僕がボギーさんの服を引っ張ると、彼はようやく元に戻った。

「お?何だ?感涙にむせぶ必要はないぞ、バーディ。俺は兄として・・・」

勝手に話を進めるお兄さんに、バーディさんは頭を振った。

「いや、あのね、パーティのお誘いは・・・」

その時だった。

「こーんにっちはー♪バーディ、支度できたぁ?」

とびきり明るいセクシーボイスが、店の玄関から飛んできた。

 

「その声は・・・クリスティー!?」

驚くボギーさんに向かって、クリスティーさんが笑いかける。

「あら、ボギー、こんにちは!バーディ、いる?」

「や、やあ、クリスティー」

呆気に取られた顔で硬直するボギーさんの横から、照れ臭そうな顔でバーディさんが登場する。

「わぁ・・・格好良くなったじゃなーい!とっても素敵よ、バーディ」

そう言って洗濯屋の美女は、バーディさんの頬にキスをした。

「おい、バーディ。これはどういう事だ」

半眼のボギーさんが、低い声で言うと、バーディさんは真っ赤な顔で説明してくれた。

「いや、あのね、実はパーティのお誘いは、昨日クリスティーの方から受けてたんだ。

ただ、パーティなんて行った事ないし、父さんのタキシードは1着しか無いから、

僕が着たら兄さんの分が無いなぁとか色々考えてたんだけど・・・」

「あら、服装なんて何でもいいって、手紙に書いてあったわよ?」

横からクリスティーさんの指摘が入る。

まあ、パートナーは枕でも良いって言うんだから、服装も着ぐるみでもいいんだろうな。

「は!それではもしや、先程バーディさんが妙な顔をなされていたのは」

ジムが何かに気付いた様子で言うと、バーディさんは、照れながらも非常に嬉しそうに言った。

「いやぁ・・・クリスティーからお誘いがもらえるなんて、夢にも思ってなかったからさ、

嬉しくて顔がにやけそうになっちゃって」

「ふふふ、そんなに喜んでもらえれば、私も嬉しいわ!さ、そろそろパーティへ行きましょ!」

「ああ・・・まあ、じゃあ、兄さん、そういう訳で・・・。皆も、後でね」

そう言うと、若い2人は立ち去った。

 

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