「どうしたんでしょうか、バーディさん・・・」

僕は心配になって、ボギーさんを振り返った。

「うーむ。いや、アイツはな、パーティに誘いたい相手がいるんだ」

さり気無いボギーさんの言葉に、僕とジムは驚きを隠せなかった。

「バーディさん、好きな人がいたんですか!?」

「何と!それは知りませんでした!」

ボギーさんは困ったように笑うと、肩を竦めて言った。

「バーディは、俺と違って、言いたい事を素直に口に出せないヤツだからなぁ。

にも関わらず態度は露骨という、典型的なシャイボーイなんだよ」

それは分かる。確かに、バーディさんって、そういう人だ。

むしろ、自他共に認めるバカ正直者というボギーさんの方が、

意外と何を考えているのか分からない気がする。

「ほら、お前等も知ってるだろ?この町のアイドル、洗濯屋のクリスティーだ」

洗濯屋のクリスティーさん。

亜麻色の髪の美人で、すっごくスタイルのいいお姉さんだ。

この店にもちょくちょく顔を出してくれて、その度にボギーさんもバーディさんも

すごく喜んでいたのが思い出される。

勿論、僕も喜んでたけど・・・。

「でも、クリスティーを狙ってる男は多いからな・・・多分お誘いも多いだろう。

バーディは、カウンターを挟めば誰とでも客として接する事が出来るんだが、

1歩外に出ると、途端に何も言えなくなっちまう」

うーん。そういう人って、いるよね。

「何か、我々がお手伝い出来る事があると良いのですが!」

ジムは心から心配そうに言った。

「そうだな・・・。よし!俺達で何とか勇気付けてやろう!」

ボギーさんがニカッと笑って言ったので、僕も頷いた。

「誘う前から引っ込んでたら、勿体無いですよね!」

 

「おい、バーディ!今から俺達がお前を大変身させてやる!」

突然入ってきた僕達を、ベッドで転がっていたバーディさんは、

訳が分からないと言った顔で見つめた。

「急に何だい、皆で?」

いぶかしむバーディさんを問答無用でジムが担ぎ上げ、地面に立たせる。

「いいから大人しく俺達の言う通りにするんだな。そうすりゃ万事上手くいく」

まるで誘拐犯の如く、ボギーさんがバーディさんを脅している間に、

僕とジムでテキパキと彼を着替えさせて行く。

「いいかバーディ、こんなチャンスはもう無いかも知れないんだ!

好きなら好きとハッキリ言っちまえ!」

「な、何の事だよ、兄さん!」

「とぼけるな!お前がクリスティーにぞっこんLOVEなのは、この俺にはお見通しなんだぞ!」

「ぞっこんラ・・・ななななな、何て恥ずかしい事を平気で!」

「ふははは、恥ずかしいものか!事実は事実だ!」

大笑いするボギーさんが、ばしばしとバーディさんの背中を叩く頃、彼は見違えていた。

 

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