「・・・」

ボギーさんの動きが止まっている。

「おお!もうこんな時間!さあ、キャディーさん、私達も行きましょう!」

悠然と歩き出すジムに、優雅な足取りで続くキャディーさん。

「・・・」

ボギーさんはまだ固まっている。

「あの、ボギー、さん・・・?」

僕が恐る恐る声をかけると、ボギーさんはくるりと後ろを振り向き、

ベッドに置かれていた枕をがっしりと掴んだ。

「フフ・・・バーディの奴・・・大人しい顔してちゃっかりパートナーを見つけていやがったとはな・・・

しかも町のアイドルを・・・」

ぶつぶつと呟きながら手早く枕の形を整え、リボンをかける。

「フフフ・・・俺のパートナーはお前さ、ナオミ・・・」

そして名付けた枕をひし!と抱き締めた。

「ボギーさん・・・」

僕が何か言おうとすると、彼は優しい顔で言った。

「いやあ、良かった」

 

その後、しばらくグラスの町はパーティの話で持ちきりだった。

中でも、大きな枕を抱えて踊り明かしたボギーさんの勇姿は、数ヶ月間、語り継がれていったのであった。

 

おしまい

 

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