愛しています、とは決して言わない。
貴方様の一族がこの土地に家をかまえたその時から、
私の一族は共にありました。
ずっとずっと、お仕えしております。
ある時は従者として。
ある時は守衛として。
ある時は乳母として。
ある時は教師として。
ある時は食物として。
ある時は武器として。
ある時は書物として。
ある時は建物として。
かたちは様々。
けれど、そこに流れる血と誓いは同じ。
誰よりもお傍におりました。
それでいて誰よりも遠くにおります。
私は貴方様の、お食事をご用意させて頂く女です。
先日、奥様を亡くされてから、涙の止まぬ貴方様。
皆の前ではこれまで通り、朗らかに堂々と。
でも、夜になると泣いておられます。
「済まない。情けないとは思っているんだ。でも…、」
私の胸に顔を埋める貴方様。
私情なく主に触れられるのは、私達一族に与えられた権利。
それが主の慰めとなるならば。
主の望みとなるならば。
「どうぞ、泣いてくださいませ。涙が流れる限り…。」
私の服が、私の肌が、貴方様の涙を吸い込んで差し上げます。
それが、とても幸せなのです。
貴方様の幸せは、貴方様の、ご家族の、ご友人の皆様のもの。
貴方様の不幸せは、私がこの身に受け止める。
それが、本当に幸せなのです。
何事もなければ私にできるのは、貴方様のお食事を用意することだけ。
毒見のため、スープをすくった銀の匙を、綺麗に拭いはしたものの、
新しいものに取り替えなかったこと。
もしお知りになっても、お許し頂けますでしょうか?
小さな銀色のスプーンで、想いの全てが済めばいいのに。
あと幾日でも、泣いてください。
私はずっと、お傍におります。
了
主従関係というのは、私が非常に好きな関係の1つです。
女主人と男従者っていうのもいいと思う!
今回劇中にお花は出てきませんでしたが、選んだのは竜胆(りんどう)です。
花言葉は「あなたの悲しみに寄りそう」「誠実」「正義」「悲しんでいるときのあなたが好き」
「貞節」「淋しい愛情」だそうで…何だか意味深(笑)。
竜胆は大好きな花の1つなので、迷うことなく決めました。
他のお花と花言葉は以下の通り↓
紅葉(もみじ)…「節制」「遠慮」「自制」「大切な思い出」
秋明菊(しゅうめいぎく)…「忍耐」「薄れゆく愛」「多感なとき」
(別名貴船菊(きふねぎく)、秋牡丹(あきぼたん)ともいうそうです。
どれも綺麗な名前ですよね♪英名の「ジャパニーズ・アネモネ」ってのも
なかなかいいなぁ)
ランタナ…「協力」「合意」「厳格」「心変わり」「確かな計画性」
(何か、会社とか銀行の話に合いそうな花言葉ですね)
もし「このお花を使って欲しい!」「この花言葉から話を作って欲しい」等のリクエストが
ありましたら、ひろまなりおてがみなりでお知らせくださいませ♪