翌日・・・。
<看板息子募集>の張り紙を出した俺達は、店を臨時休業して、奥の自宅で首を捻っていた。
店の前には人だかり。
聞こえてくるのは明らかに怪訝そうな声。
「看板息子〜?」
「何かしらねぇ?」
「相変らずエキセントリックな事をする兄弟だなぁ」
バーディは眠そうな顔で、額を押さえつつ、言った。
「兄さん・・・ホントに、上手くいくかなぁ・・・?」
俺はがっしりとスマイルを浮かべて言い切った。
「大丈夫だ!すぐに応募者が来るって!」
何せ、大した娯楽も無い田舎町だ。少しでも珍しい事が起これば、
すぐにでも皆飛びついてくるに違いない。
そうこう言っている間に、最初の訪問者が扉を叩く音がした。
「そぉら!来たぞっ、バーディ!」
「ええ〜?ホントに??」
「こんにちは!表の張り紙を見て、来ました!」
やって来たのは、看板のような息子だった。
「・・・」
「・・・」
これには流石の俺も驚いた。何と四角い息子なんだろう。
「あ・・・いらっしゃい。とりあえず、そこに座って」
「はい!」
冷や汗をかきながら言うバーディに、彼は素晴らしい笑顔でハッキリと返事をした。
ううむ。バーディは確かに細身だが、それにしてもスゴイ体格差だ。厚みが違う。
旅芸人一座の、怪力男か何かだろうか・・・。
「えーと、お名前は・・・?」
「はい!ジムと言います」
「あ、はいはい、ジムさんね・・・えーと、お年は?」
「はい!今年で18になります」
嘘だ。それは嘘だ。絶対に。
俺はともかく、バーディより年下ってのは嘘だ。
見ろ、その証拠にキャディーさんが尻尾を振って大喜びしている!
キャディーさんは三十路過ぎ(外見)の男にしかあんな反応はしないんだぞ!?
心の中で叫ぶ俺を他所に、面接(?)は続く。
「ええと、こう言ったお店で働いた経験は・・・?」
「はい!以前、用心棒を務めさせて頂いた事があります!」
用心棒・・・。
「な、なるほど。一応、あの、志望動機は・・・」
「はい!自分は将来、酒場を経営したいと思っておりまして、
大陸各地を旅しながら、様々な酒場で働いて、経験を積んでいる最中なのです。
それでこの度、『看板息子』という非常に新しい試みに興味を持ちまして、
応募させて頂きました!」
堅実だ・・・。
「そ、そうですか。それではですね、他の方とも面接をして、
その上で結果をお伝えしますので、今日はこれで・・・」
「はい!分かりました。どうぞよろしくお願い致します!」
しどろもどろに言うバーディと、傍で見守るだけの俺にきっちりとお辞儀をして、
ジムは帰っていった。