「なあ、バーディ。一体何をそんなに悩んでいるんだよ?」

店の床を磨き終えて、キャディーさん(何故か、こいつは皆に『さん』付けで呼ばれている)に

与えるエサを用意しつつ、俺はさり気無く聞いてみた。

「ん?ああ、いやね、最近、うちの店には何かが足りないって気がしてさ」

バーディはそう言って、また溜息を吐く。

「おいおい、これ以上何が足りないって言うんだよ?贅沢なヤツだなー」

エサを求めて飛びかかってくるキャディーさんに押し倒されながら、俺は言った。

「だから、それがわからなくて困っているんだろ?」

バーディがムッとした顔で俺を睨みつける。

 

俺達は、しばしの間言い合いをした。

 

「そうだ!分かったよ兄さん!看板だ!看板娘がいないんだ!」

バーディがメガネの奥の眼差しをキラリと輝かせた。

「看板娘だと??」

むう。確かにうちには娘自体いない・・・いや。

「キャディーさんがいるじゃないか」

そう。キャディーさんは立派なレディーなのだ。

「何言ってんだよ!キャディーさんは犬だろ!?」

再びキレるバーディ。普段は割りと大人しいくせに、意外とホットなやつだ。

噂のキャディーさんは、満腹になってウトウトしている。

 

俺達は、再び言い争った。

 

真夜中まで続いた口論は、俺の一言でケリがついた。

「いいかバーディ、これからは女性客をターゲットにした商売が伸びる!

その最初の試みとして、看板『娘』では無く、看板『息子』を募集しよう!」

「そうか・・・いや、それ意外と面白いかもしれない!やろう、兄さん!」

夜中まで口角泡を飛ばして議論した俺達は、非常にハイテンションだった。

なので、勢いで全てが決まったのである。

 

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