8・おねむなあいつに注意しろ

今日はタカの話をしよう。
もちろんこの俺、車井 巡がだ。

タカ―高村 高という男は、穏やかというか、マイペースというか、
まあ角のない男だと思う。
友達は多い方だし、勉強もそれなり。ノリもいい。
俺達が出会ってから、もう10年くらいになるが、
相変わらずな関係が続いているのは喜ばしいことだと思う。
生涯の友として、付き合っていきたい相手だ。

しかし、そんなタカが別人の様な姿を見せる時がある。
それは、あいつが寝る前と、寝起きだ。

人は大体、寝起きが悪いか寝入りが悪いかのどっちかに別れるらしい。
中にはどちらも良い、という素晴らしい人間(例えば俺)のような者もいるが、
どちらかといえば…という奴は結構多いのではないかと思う。
タカは、どっちもすごく悪いのだ。

アレはいつだったか…。
タカの両親が仕事で2、3日家を空けるというので、アイツが俺を呼んでくれたことがあった。
「学校も休みだしさ、ヒマだからオレんちに泊まりに来いよ!」
お互い、歩いて行き来できる距離に住んでいるせいか、
それまで「泊まる」という発想はなかったのだが、たまにはゆっくり語り合うのもいいだろう…ということになり、
俺はタカの家に遊びに行った。

夜遅くまで、色々な話をした。
お互いの性格のこと、趣味のこと、将来のこと、今のこと…。
しかし夜も更け、タカの動きが怪しくなってきた。

「お前、眠いのか?」
「んあー…?眠くは、ない、ですよ。」

何故、多くの人は「眠いか?」と聞かれると、それを否定するのだろう。
別に眠いなら眠いと正直にいってくれればいいのにと思う。
この時のタカは、上半身が前後左右にぐらぐらと揺れ、言葉遣いも変わり、
誰がどうみても眠くない筈がなかった。
「そろそろ寝るか。」
「大丈夫だっつってんじゃん。まだ平気だって〜。」
別に俺も寝たくない訳ではなかったのだが。
「別に寝ても構わんぞ。時間も時間だし!」
「やかましー!眠いのはオマエの方じゃろうがっ!オレのせいにするでないっ!」
まるで酔っ払いのようでもある。
逆ギレされてしまったので、俺はしばらく黙っていた。
タカのこんな姿を目にする日が来るとは思わなかったが、
それがちょっと面白くもあったからだ。
特に言葉遣いの変わりっぷりが。

やがて。

「zzzzz…。」

気持ち良さそうな寝息が聞こえてきたので、
俺も安心して布団に入った。

そして、翌朝。

「おい、そろそろ起きろ。腹が減ったから、飯でも買いに行こう。」
「んあー…?」

危険信号だ。この「んあー」は。
「まだ眠ぅござる…zzzz…。」
身体こそ起こしたものの、タカは変な形に折り曲がってしまった。
「ござると来たか…。」
仕方がないので、その辺に置いてあった目覚まし時計を手に取り、
タカの耳元で鳴らしてみた。

大音量で般若心経が流れる。
…確か俺が誕生日にプレゼントした時計だ、これは。

「うがー!うるせっ!時計、切る!」
何故か片言でしゃべりながら、半眼のタカが暴れだし、
それを止めるのに90分くらいかかった。

しかし、本人はこのことを一切覚えていなかった。

「ウソ!?オレそんなだったの!?」
「ああ。そんなだったぞ?」

あれからタカの家に泊まったことはないが、
今でもあんななんだろうか。
今度、久し振りに泊めてもらうかな?

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初めてのジュン視点。
ちなみに管理人は寝起きがとても悪いです。
声が1オクターブ低くなって、育ちが悪そうな感じになります。
妹の証言では、寝言もすごいらしいです。やだなぁ。
しかし自分、ボギーとかジュンみたいなキャラが好きみたいですね。
タカとバーディもちょっと似てるなぁ(^^;頑張って書き分けなきゃ。


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