6.うさぎ跳びで学校へ!!

オレとジュンにとって「ヒーローごっこ」が特別な遊びだった理由というのは、いくつかある。
何よりも、オレとジュンが仲良くなるきっかけを作ってくれた…というのは大きいのだが、
こんなに念入りに準備をした遊びは他に存在しなかった。
ジュンは毎回ストーリーやキャラクターを考え…、という話は前にしたと思うけど、
じゃあオレは何をしていたのかっていうのが今回の話。

「うぅ〜、もぉダメ〜。」

あれはいつだっただろうか。
宇宙アスリート・マラソーンとの戦い。
非常に温和で紳士的な性格である彼は長距離走を得意とし、
どんな相手にも暴力ではなく長距離走―マラソンで勝負を挑むという、
妖怪なのか怪人なのか宇宙人なのか何だかよくわからないヤツだった。

「さあ、走りましょう。ワタクシの星では、成人の証として42.195kmを走り抜くのです。」

というセリフがあって、いざ勝負。

オレは…運動はまあ、特別できる方でもなく、どんな種目も平均的な成績を残していた。
ところがジュンは、ものすっごく体育が得意な男だった。

「よぉい、ドンッ!」

まさか本当に42.195km走らされるとは。

「…、ジュ、ん、ストップ…。」
「どうしたのですか、シャイニング。貴方の力はこんなものですか!」

今から考えれば恐ろしい体力の持ち主だ、車井 巡という男は。
この当時、オレ達はまだほんの子供だったはずなんだけど。
そしてコイツは、1度「ごっこ」を始めると、物語が終わるまで役になりきってしまう。
色々な意味で恐ろしい男だ。

「っは、オレ、も、ダメ…っはー、はー、」

汗だくで、意識も朦朧としてて、木陰に倒れこんだ。
ぐったりとしたオレの頭上から、ジュン…もとい、マラソーンの声が聞こえる。

「シャイニング。貴方の力はこんなものではないはずです。
私にはわかる。貴方の秘められた力が。
それを開花させるため、私の星に伝わる特訓法をお教えしましょう。」

(特訓…?何…?)

「明日から<うさぎ跳び>で移動するのです。
何処へ行くにもうさぎ跳び。
何をするにもうさぎ跳び。
そうすれば、貴方の中の眠れる獅子が、竜が、虎が、鬼が、ヒーロー魂が、
みんな1度に目覚めるでしょう。」

そして、この物語は終わった…筈だった。

翌朝。いつものようにジュンを待っていると、いつもと違う挨拶が聞こえた。

「おはようございます、シャイニング。いい朝ですね。」
「なっ…ジュン!もうそれおわったんじゃないの!?」
焦るオレに、ジュンは一瞬だけ素に戻ると、
「前後編だよ!特訓して強くなったシャイニングが、マラソーンを倒してこの話は終わるんだ!
ヒーローが負けたままじゃ、終われないだろう!」
「ええー!?」

まだ続くの!

「さ、行きますよシャイニング!うさぎ跳びはそんなに速さが出ませんからね、
さくっと行かないと遅刻しますよ!」
「いやだぁぁぁぁぁ…。」

…でも、数日は続いたんだよな。
で、最終的にマラソーンに…勝ったんだっけ?
忘れちゃったなー。今度ジュンに聞いてみるか。

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うさぎ跳びあんまり関係ないですね。
でも、こういう馬鹿なことができる友達っていうのは貴重だと思います。
ジュンとタカはいい関係になってきたな。


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