5・国語はあいつの得意科目

…まあ、そんな訳だから、ジュンはの得意科目は国語だった。
もっとも、オレも得意だったんだけど。
国語っていうのは、読み書きがキライでなければ別に勉強しなくてもいいという、
ありがたい教科だ。
オレも本を読んだりするのは好きな方なので、
これといって国語のために時間を割いたことはない。
せいぜい、漢字の練習くらいのものだ。

いつだったか、こんな問題が出たことがあった。

<以下の言葉を使って、文章を作りなさい。>
『誓う』『友達』『永遠』『友情』

まあ、模範解答というか、フツーに考えれば

「友達と永遠の友情を誓う」

でいいだろう。オレの答えはそうだった。
「なー、できた?」
目の前のノートに向かって真剣な顔でペンを走らせるジュンの腕を、こっそりつつく。
「ん?ああ、できたぞ。」
そういってジュンが見せてくれたノートには。

「幼い頃から友達だった2人はいつしかお互いの間に流れる空気が
今までのそれとは変わっていることに気が付いた。
その正体が何なのか。
疑うことなどなかった友情に亀裂が入ってしまったのか。
違う。そうじゃない。
子供だった2人は、時の流れのままに大人になっていた。
そして、大人になった2人は男と女になっていた。
ある雨の日、男―タカは、2人の遊び場だった海岸に幼馴染みのミサキを呼び出した。
「どうしたの、タカ?こんなところに呼び出して…。」
不安そうなミサキの声を背に受け、タカは天を仰いだ。
「ミサキ!」
強い決意を秘めた声が、辺りの空気を震わせる。
「お前が好きだ!俺はお前に永遠の愛を誓う!!」
「…!タカ!」
振り返って両腕を広げた男の腕に、女はためらいなく飛び込んだ…。」

…。

「すごいなジュン。相変わらず。」
「ふっふっふ。今回はすらすらペンが走ったぞ。」

ジュンはどんな時でも物語を作る男だった。
それもすごいベタなやつを。
で、主人公は必ずオレだった。

「あのさ、でもさ、これはちょっと恥ずかしいよ。」
しかも、何だか古臭い恥ずかしさの漂う話だ。
「いいじゃないか。物語の中でくらいモテたって。」

付き合いが長いからこそいっていいセリフだ。

いつかオレも、ジュンを主人公に話を書いてやろうと思っているのだが、
そっちの方はイマイチ向いてないらしい。
ちなみにこの後、ジュンのノートには◎と一緒にコメントが添えられていた。

「次回作も楽しみにしています。」

先生には受けていたらしい。

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私も国語だけは成績が良かったなぁ。
数学は絶望的でしたが。
それにしても、こういう問題が出るのって何年生くらいですかね?


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