2・奴の自己紹介は…

オレがアイツの名前を知ったのは、アイツのギガ・ダークネスを喰らった次の日のことだった。
ラジオ体操のために学校に行ったら、校門の前で待っていたのだ。

「はっはっはっはっは!待っていたぞシャイニング!」
「あ!お前昨日の…!」

咄嗟に身構えたオレを見て、アイツは昨日以上に嬉しそうに笑った。

「いいぞー!やっぱヒーローはそうじゃねーとなっ…おっと」

はっとした様子で口元を押さえ、アイツは再びエラそうな喋り方になった。

「シャイニング!ここがきさまの墓場になるのだ!」
「なにをっ!オレは死なないぞ!」

…別にアイツのペースに合わせたつもりはなかったんだ。
オレとしては、フツーの会話の延長として話してたつもりだった。
で、そこまできて初めて「シャイニング」=自分ってことに気付いたんだよね。

「なぁなぁ、そういえばシャイニングってオレのことなの?」
「今更ヘンなこというなよ!そうに決まってんだろ!ちなみにオレは邪獣将軍ブラック・ビーストだ!」
「うん、わかった。じゃあえっと…ブラック・ビースト!この星はお前には渡さない!」

今だったら、やたら色んなことに突っ込んだりしたんだろうけど、
あの時は突然始まったヒーローごっこがすごく面白かったんだ。
相手(しかも敵)の正体がわからない分、本当にヒーローっぽい気がしてさ。
ところがいよいよ盛り上がってきたところで、受付のおばちゃんに声をかけられた。

「あんた達!遊んでないで、早く体操しに行きなさい!」

…これは今でもそうだけど、楽しい時を邪魔されるほど腹立たしいことはないと思う。
オレ達は露骨にムッとして、おばちゃんに盛大なあかんべーをすると、
2人で校庭に走った。
もう、ラジオ体操の歌が流れていた。

「ねぇねぇ、ホントの名前は?」

腕をぶんぶん振りながら、オレは隣のブラック・ビーストに聞いてみた。

「…ジュン。車井 巡っていうんだ。シャイニングは?」
「オレはタカ。高村 高だよ!」
「そっか。タカだな。でも、お前は変身するとシャイニングになるんだぜ!」
「うん。ジュンは、本当はブラック・ビーストなんだよな?」

腰をぐるんぐるん回しながら、オレ達は自己紹介しあった。

「なあ、後で俺の家こいよ!遊ぼうぜ!」
「うん!」

それ以来、オレはラジオ体操というものが非常に好きになった気がする。
しかし、ラジオ体操で自己紹介しあうヒーローと悪役って、健康的だよなぁ…。

1.へ戻る3.へ続く


2題目でようやく自己紹介です。
小さい頃、ごっこ遊びが大好きでした。
あの頃から、自分でお話を考えて遊ぶのが楽しくて♪
ヒーローごっこはそんなにたくさんやりませんでしたが、
我が家にはパーマンセットとフラッシュマン(ピンク)のヘルメットがありました。


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