1・出会い頭はいつも殴りあい

オレ、高村 高(こうむら たか)。小学生だった。
そしてアイツも、小学生だった。
…学年は忘れたけど。
とにかく、1学期の終業式の日。
蝉の声をBGMに、アイツはオレの前に現れた。

昨日、母さんとスーパーに買い物に行って、
カキ氷マシーンを買ってもらったんだ。
<フリーズ・X>っていうカッコイイやつ。
ものすごい勢いで氷が出るやつ。
だから、早く帰って食べよーって思ってたんだ。

自作のカキ氷の歌を歌いながら、通いなれた道を走ってた。
その時だった。

「喰らえ!ギガ・ダークネス!!」

そういって、近くのガードレールの上から飛び降りてきたアイツ。

「え?うぁあ!」

派手にぶつかったオレ達は、そのまま道路にひっくり返った。
あの時、車が来てたらどうなってただろう。

「なにすんだよっ!いたいなっ!」

ホント、ぶつけた頭とすりむいた足が痛くて。
半泣きだったけど、オレは頑張って怒ったんだ。
すると、アイツは驚いたような顔をして、その後すぐに嬉しそうに笑ったんだ。

「よし!お前こそ俺の敵に相応しいヤツだ!」

って、いったんだっけ?

「なにいってんの?いみわかんないよ!」

ちょっとしゃくり上げながらだったから、カッコ悪いことこの上なかったなぁ。
でも、アイツにはクラスの乱暴者が持っている雰囲気はなくて、
ただ変なヤツだなって感じで、オレはわぁわぁ泣くことはなかった。
そしてアイツはオレと強引に握手して、くるりとオレに背を向けた。

「はーはっはっは!俺は世界を征服する男だ!また会おうぜ!」

そういうと、そのまま勢いよく走り去っていった…。
名前も何も名乗らないまま。

―あれからもう、何年経っただろう。
今ではアイツの名前が車井 巡(くるまい じゅん)ということはわかっているし、
それ以外にも色々わかったことがあるが、オレ達は相変わらずだ。

「はっはっはー!タカー!待たせたなー!!」
「ジュン!遅い…っ!」
「喰らえぇぇぇっ!」

飛んでくるアイツの右拳。
負けじと繰り出すオレの右拳。

「あぎゃ」

そしてオレはあれから1度も先手をとれたことがない。

「痛ぅぅぅぅぅぅ…」
「フッ。正義の味方のくせに先手必勝なんて狙うからこうなるんだよ!行くぞ!」

毎朝の物騒な儀式を終え、オレ達は学校へと急いだ。

2.へ続く


なかなか刺激的な1題目ですね。
うまく生かせているといいのですが…。
ちなみに、現在の高と巡は高校生くらいの予定です。
これからどうなることやら。


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