「えっと、ハ、ハ、ハ…あれ?あった!これだ!」
ヒソヒソ声で、おまけに忍び足のリンクの手が掴んだのは、妙に新しい本だった。
しかも、もともとあった本たちの間に、むりやりはさんだようにも見える。
背表紙が、本棚からはみだしていたのだ。
「ううむ…。一体誰が、こんな本を書いたんじゃ!?」
飾り文字で記されたタイトルの下、やはり美しい文字でつづられていた名前を見て、
リンクは更にびっくりした。
「グフーだって!?」
リンクの声に、エゼロが唸る。
「なんということじゃ…この本は、グフーが自分で書いたというのか!?」
2人はしばらくじーっと黙って本を見つめていた。
あのグフーが書いた本って、一体どういうものなんだろう。
もしかして、開いたらチュチュがいきなり飛び出してきたりして。
いや、もしかしたら開いた瞬間「魔神の呪い」で石にされてしまうかも。
「…でも、待てよ?」
はたと気付いてリンクはエゼロを見上げた。
「これ<シュンのベストセラー>になってたんだよね?」
ベストセラーというのはつまり、たくさんの人が読んで、この本は面白いと思ったということだ。
「ムッ。確かにそうじゃな…。」
エゼロは体を左右にふりふり、本を見つめている。
「じゃあ、別に何ともない本なんだよ、きっと!よし、読んでみよう!」
「ま、待て、リンク!もう少し様子を見てから…!」
エゼロが止める前に、リンクは本を開いた。
その時、モリブリンの鋭い一撃がわたしのマントをかすめた。
しかしわたしはそれをターンしてかわし、もっと鋭い一撃をおみまいした。
「…???」
リンクが首をひねる。何でモリブリンとの戦いのことなんて書いてあるんだろう。
「リンク。本は最初から読むもんじゃぞ」
エゼロに注意され、リンクがちょっとほっぺたを膨らませてページを戻すと。
この物語は、剣士グフーの血沸き肉踊る冒険譚である。
「…???」
「どうした、リンク?」
黙り込んでしまった少年にエゼロが声をかけると、ぶすっとした表情で答えが返ってきた。
「…何て書いてあるのか、読めない。」
学校で読み書きは教わったが、まだリンクには読めない字もあった。
「あー、そういうことか。
『この ものがたりは、けんし グフーの ち わき にく おどる ぼうけんたん である。』
と書いてある。」
得意そうなエゼロの言葉に素直に感心すると、リンクはもう1度首をひねった。
「それってどんな話?冒険の話?」
「まあ、そういうことじゃな。しかし…」
エゼロが何かいいかけた時、2人の後ろに音もなく影が現れた。
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