「ほほう!なかなか立派な図書館じゃな!」
頭の上でエゼロが大きな声を出したので、リンクは指を立ててシィッといった。
「エゼロ。図書館では、静かにしなきゃいけないんだぞ。」
神妙な顔をして注意してくるリンクの頭を小突いて、エゼロはいい返した。
「わしはいいんじゃ。」
「ウソだぁ。また勝手に自分で決めたクセに!」
だまされないぞ、といわんばかりのリンクを見て、カウンターのおねえさんが笑っている。
「へいへい。わかった、わかった。」
まだ何かいい返すかと思われたふしぎのぼうしは、ちょっとバカにしたような顔をしただけで、静かになった。
リンクが1人で図書館に来たのは、これが初めてだった。
まだ学校に通っていた頃、ゼルダ姫と一緒に来たことはあったが、
その頃からリンクは外で遊ぶ方が好きで、たくさんの本に目を輝かせている姫の横で、
一生懸命あくびを噛み殺していたのだ。
姫のことを考えると、どうしても姿が頭に浮かんでしまう。
悲しい顔のまま、石になってしまったゼルダ姫。
せめて、笑顔だったらよかったのに。
ふと黙り込むリンクの上から、もう1度大きな声が降ってきた。
「おお、リンク!あそこに<今がシュンのベストセラー>と書いてあるぞ!」
「だから、静かにしなきゃだめなんだって!怒られちゃうだろ!」
そういう自分の声がエゼロより大きくて、リンクはしまった!と口を押さえた。
キョロキョロと辺りを見回すリンクの耳に、シシシ…と、エゼロの変な笑い声がこっそり聞こえてくる。
幸い、誰にも怒られなかった。
でも、カウンターのおねえさんにもう1度笑われてしまったのがちょっと恥ずかしくて、
リンクは赤くなった。
「なになに…、ナンバー3 ハイラル いまむかし。
ナンバー2 うるわしの ゼルダ姫。
ナンバー1 ハイラルの中心で グフーとさけぶ。ふーん。」
「ほほー。どれもなかなか面白そうじゃなー。」
4つの目が、張り紙の文字を追う。
何気なく通り過ぎようとして、リンクは慌ててかけ戻った。
「ハイラルの中心で…?」
「!!!???グフーと叫ぶ???!!!」
2人して大声で叫ぶと、後ろからおねえさんの怖い声が聞こえた。
「コラ!図書館では静かに!わかってるでしょ!?」
リンクは肩をすくめると、慌てて走り出したのだが。
「コラ!図書館では走っちゃダメ!」
もう1度怒られてしまい、早歩きにした。
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