「うわーあー!」
「きゃーあー!」
「おかあさーん!」
「おとうさーん!」
「ちゃーちゃー!」
こいのぼり達が悲鳴をあげます。
それもそのはず、だって頭上ではいつも通り吹き流しがのんびりと揺らいでいるのに、
ついて行こうと思ったら、突然強い風が吹いてきて、押し戻されてしまったのですから。
「こ、これは一体どうしたことだ?」
お父さんが金色の眼をくるくるさせながら言いました。
「あなた・・・子供達は大丈夫かしら?」
お母さんは不安そうに眼をぱちぱちさせています。
「うわーん!おかあさーん、飛ばされちゃうよ〜!」
お兄ちゃんはもう泣きそうです。
「お父さん、あたしたちどうなっちゃったの?」
お姉ちゃんも声を震わせています。
でも1番小さな赤ちゃんだけは大喜び!すっかりにこにこ顔です。
「み、みんな!とにかくしっかりつかまっていなさい!棒から離れちゃ駄目だぞ〜!!」
お父さんは一生懸命叫びました。
「さ、ど〜お?吹き流し。満足でしょ?皆見てるわよ」
そよ風は突風の勇姿にうっとりしながら言いました。
「う、うん・・・まぁね・・・」
吹き流しはちらりと横目でこいのぼり達を見ながら返事をします。
(何だか・・・皆必死になってる・・・。お兄ちゃんなんか、泣きそうだし・・・)
「流石あたしの彼氏よねー!そうだ!今日は家に帰ったら
南国から運んで来たあま〜い果物の香りでもご馳走してあ〜げよ♪
彼ってば甘党だからぁ・・・ねぇねぇ吹き流し、あたしの話聞いてる〜?」
すっかりのろけているそよ風をよそに、吹き流しはこいのぼり達をじっと見つめていました。
「うわ〜ん!」「うえ〜ん!」
大変です!とうとうお兄ちゃんとお姉ちゃんが泣き出してしまいました!
「ああ、2人共!泣かないで、大丈夫、大丈夫よ!お母さんとお父さんがいるからね・・・!」
そうやって子供達をなだめるお母さんも真っ青になってしまい、まるでお兄ちゃんが2人いるみたい。
「ほらほらお前達、泣くんじゃないよ。こんな風はすぐに止むからね!」
「あちゃーちゃー」
お父さんと赤ちゃんも、お兄ちゃんとお姉ちゃんを何とか泣き止ませようと、必死です。
「はーっはっはっはっ!これぞ突風!思い知ったかオレの力!」
突風は絶好調で風を吹かせています。
(大変・・・!私、こんなことしたいんじゃなかったのに・・・!!)
そう思った吹き流しは、そよ風の腕を振り解いて、突風に身をまかせました。
「吹き流し!?あんた、何やってるのよ!」
驚いたそよ風が思わず叫ぶと、吹き流しも負けじと叫びました。
「止めて!!突風!!もういいから!風を止めて!!!」
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