「ありがとう。本当に、ありがとう!姫と陛下を守ってくれて。」
そして躊躇いなく伸ばされた手を、ナイトの小さな手がしっかりと握る。
初めての握手。
―守ってくれて。
ピエールは、しっかりと頷いた。
「…そうだったんでがすか。間違えてぶん殴らなくて良かったでがす。」
「変り種がいたもんだなー。」
「何をのん気なことをいっておるか!そもそもお前等がちんたらしていなければこんなことにはだな…。」
「ホントよね。王様はともかく、お姫様が無事で良かったわ♪」
「まったくでがす。」
「こりゃ、ゼシカ!どういう意味じゃ!」
わいわいと好き勝手にしゃべり出した仲間達を安心したように見つめ、
エイルという名の少年は、雌馬に駆け寄った。
「ミーティア。間に合って良かった…。」
すんなりとした首筋に、顔を埋める。先刻までの強さが嘘のような、泣いているようにも見える仕草。
「ごめん、遅くなって…でもホントに良かった…。2人が無事で。」
(エイル…。大丈夫よ。ミーティアも、お父様も、元気だから。)
少年の影と少女の幻が重なり合う。
「それでは、我々はこれにて。道中、気を付けて行かれよ。」
ナイトの堅苦しい挨拶に、スライムのピエールははっとして身体を震わせた。
「おお、本当に世話になったな。おぬしらの事は忘れんぞ。」
王と呼ばれた緑色の魔物が、尊大に笑う。
「またどこかで会えるといいわね!」
「ま、達者でな。」
「そっちも気をつけて行くでがすよ。」
みんな笑顔になっている。
(ありがとう、ピエール。お父様と、ミーティアを守ってくれて。)
「…また、きっと会おう!ピエール!」
エイルとミーティアも、笑顔だった。
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