「とりあえず、貰えるもんは貰っとく?」
海堂は次々に手渡されるチョコレートを受け取った。
すぐに両手がいっぱいになると、どこからともなく現れた男子生徒が紙袋を出してくれた。
「これに入れてください」
「お前、誰だよ」
「生徒会のものです」
「生徒会?」
きょとんとする海堂の前に立って露払いのようにその生徒会役員は、左右の女子高校生のチョコレートをさばいていく。高遠にも同じように紙袋が渡されていた。
「さ、こちらにどうぞ」
教室ではなく、校舎の三階の廊下に案内される。
「何があるんだ?」
海堂が訊ねると、その生徒会役員が答えるより早く前方から声がした。
「ようこそ、海堂龍之介くんっ」
見ると生徒会長本田秀一。その左右に副会長と新聞部の部長が控えている。
「今年のチョコキングは、どうやら君のようだね」
「は?」
目をむく海堂の視線の先、三階の廊下の天井からは

『和亀高校名物トトカルチョ!バレンタインチョコキングは誰だ?!』

と、書かれた派手な横断幕が垂れ下がっていた。

「チョコキング……」
呆然と呟く海堂。
高遠も、唖然。
「うーん、高遠ヤマトくん、君もがんばったね」
本田は高遠の紙袋を覗き込んで言った。
「何なんだよ?こんなトトカルチョやってたか?」
海堂が言うと、
「毎年、三年生の間でだけね」
本田は微笑んだ。
「モノがバレンタインのチョコだけに自分も対象になると落ち着いて賭けられないから、対象は二年生まで、賭けるのは三年生だけって決まりなんだよ」
新聞部の部長牧野が補足する。
「誰が一番貰ったかなんて、ここから見てわかんのかよ」
海堂が、もっともな質問をすると本田は窓ガラスに張り付くようにずらりと並んで立っている面々を掌で指し示した。
双眼鏡片手に、右手にはストップウォッチのようなもの……?

「紅白でも活躍された日本野鳥の会の皆さんに手伝っていただいている」

本田の言葉に、高遠と海堂はガックリと膝をついた。

「じゃあ、今年のチョコキングにインタビューを」
牧野の言葉で、橘が飛んでくる。
パシャパシャと写真を撮られて、海堂はブチきれた。
「ざけんなっ!」
傍にいた本田に持っていたチョコレート入り紙袋を突きつけるように渡すと、美貌の生徒会長は慌てた声をあげた。
「しまった!大事なことをやるのを忘れていた!」
高遠の紙袋も取り上げて、副会長に渡し
「それじゃあ、今から掛け声と共に投げるから、一緒に数えてくださーい!」
紙袋からチョコをほおリ投げる。勿論、副会長も同時に。
「いーち、にぃーい……」

「それも、紅白ネタかいっ!!」


A 多少落ち着いたエンディングを迎えたい。

B どうでもいい。この勢いでいってくれ。