「やっぱ、チョコなんて、女こどものもんだぜ」

机の中にしまいこんで、海堂は眠った。



次の日、高遠が迎えに来たときにも、チョコレートのことはすっかり忘れていた。
いつものようにトラノスケのことやテレビのことなど、たわいない話をしながらの通学。
ところが都立和亀高校の正門前まで来ると、嫌でもバレンタインディを思い出すはめになった。
近隣の女子高生が、気合を込めたチョコレートを手に、自分のお目当ての男子を待っている。
「なんだよ、こいつら」
転校してきた海堂、去年のバレンタインディは別の学校だった。そこではこんな光景はなかった。
「うん、何か、このへんのイベントみたいになってるらしい。去年もこんな感じだったし」
「ふうん」
何となく自分たちに集まる視線にも不穏なものを感じた二人。
知らず知らずに高遠も海堂も急ぎ足になった。
夜道に後をつけてくるストーカーはターゲットが早足になったとたんに自分も走り出すというが、まさに、ここに集まった女子高生も同じだった。海堂たちが早足になったとたんに、四方から堰を切ったように押し寄せてきた。

ドドドドドドドド…………

バッファローの群れの大移動を思わせる足音。
ここはアフリカか?サバンナなのか?ライオン○ングはジャングル大帝のパクりじゃないのか? >古い話題ですみません。

あっという間に、二人はセーラー服の集団に取り囲まれた。
「2―Bの高遠さんですよねっ」
「海堂龍之介くんですよねっ」
「体育大会の応援団のカッコ見ましたっ」
「今年のミス和高、見ましたあっ」
「受け取ってくださあい」
「私もおっ」
「受け取ってーっ」
「キャーッvv」
「カワイ一ッ!!!」


A 我に返って逃げる。

B とりあえずチョコを受け取る。