超高速リレー小説『薔薇の鎖』

presented by もぐもぐ&れな

その16 byもぐもぐ
       

「まずは、準備万端の俺からだっ」
松井が、天を突くように怒張したそれを取り出し、友哉が止める間もなく、僕の後ろにずぶりと刺した。
「はああああぁぁぁぁん……」
僕の甲高い声に、兄は美しい眉をひそめながらも、
「まあ、たまにはこういうのも刺激があって良いか」
スラックスのファスナーを下げた。
「ああっ……んっんんんっ……」
後ろは松井の熱いモノで突き上げられ、口には兄の勃ち上がりかけたモノを突っ込まれ、全身を駆ける気が遠くなりそうな快感に身を震わすと、視界の端に友哉の姿が目に入った。
「京、京っ」
友哉は泣いていた。
僕は、目で微笑んだ。すると、友哉は
「ごめんっ、京」
そう叫んで、自分のジーンズのベルトをかちゃかちゃと外しにかかった。
友哉、お前もか―――――――


そのあとの記憶は無い。
気がつくと、もう夜だった。
「起きたか?夕飯の準備できてるぞ」
兄が珍しく優しい声をかけてくる。
ひょっとして、全部夢だったのかしら……
希望的観測でそう思ってみたが、全身に残る跡と気だるい疼きが、僕が三本咥え込んだことは間違いないと語っていた。
夕飯は京都土産のオンパレードだった。
僕は、兄に恐る恐る訊いた。
兄以外の男に体を開いてしまったことを、怒っていないのか……
「まあねえ」
兄は秀麗な顔を一瞬曇らせたが、それはほんの一瞬で
「いつも美味しいものばかり食べていると、たまにはジャンクなもの食べたいってのは、わかるからね」
は?
僕には、意味がわからない。
「あの松井って先生がマクドナルドなら、友哉クンは携帯非常食のカップラーメンってとこかな」
兄さん??
小首をかしげる僕に、兄はこれ以上無い艶やかな微笑で言った。
「でもね。基本的に、ご飯はおうちで食べるんだよ、京」


* * *
次の日は休日の土曜だったので、僕は昼まで寝ていたが、昨日の回覧版を置きっぱなしにしていることに気がついて、お向かいの牧野さんのお宅に届けに行った。
牧野さんの奥さんは、美人だけど噂好きだ。
「ねえねえ、京ちゃん、知ってる?」
「はい?」
「橋田さんのおばあちゃん、とうとうボケちゃったんだって」
ひいっ……そういえば、僕はすっかり橋田さんのことを忘れていた。相変わらずのニワトリぶりだ。
「何でもね、昨日帰ってきたら、髪の毛がいきなり真っ白になっていて、ボケちゃってたそうなのよお」
「………………………………」
「まだ、そんな歳でもなかったのにねえ」
「そう、ですね……」
内心、青褪めている僕に気付かず、牧野さんはぷっとふき出して言った。
「でもね。さっき見たら、あのヘアピースはつけたまんまなのっ」
薄かった頭がまっ白になって、そのてっぺんに黒々としたヘアピースがのっている。
「それで、ヅラデーションに代わるネーミング大募集なんだけど、京ちゃん、どれがいいと思う?」

『モノクロ』
『逆富士』
『おにぎり山』

僕は、フラフラと牧野さん宅を後にした。
橋田さんのボケた理由が僕にあるなら、とてもそんなあだ名で今後呼ぶことはできない。
面白かったけど。

五時になる前に、僕は兄の研究室に向かった。
兄に、橋田さんのことを尋ねようと思ったのだ。
そうすると、兄は事も無げに言った。
「あれね、量が多すぎたんだよね」
は?
また分からないぞ。何を言ってんだ??
「ほんのちょっと忘れてもらうだけだったのに、暴れるから、いっぱい飲ませちゃったよ」
って、何か?!
「橋田さんって、僕のあれ見てショックでボケたんじゃないのっ??」
僕の言葉に、兄は片眉を上げて言った。
「それくらいで、髪が一夜にして真っ白になるかい?」
「じゃ、それじゃ……」
「副作用だよ。クスリの」
「どんな薬、使ったんだよ―――――っ」

「まあまあ、ちょっと記憶を無くすクスリだよ」
兄は、僕をなだめるように頭を撫でて、そして言った。
「だから、京。松井や友哉が鬱陶しくなったら、いつでも言いなさい。すぐに断ち切ってあげるから……」
ニッコリと微笑む兄は、薔薇の花のように美しかった。
ああ、松井や友哉は断ち切れても、兄という名の薔薇の鎖は、これから一生僕を縛り付けるのだ――――って、このタイトル、そういう意味だった?






                                            完

    

           
TOP     リレーTOP