超高速リレー小説『薔薇の鎖』

presented by もぐもぐ&れな

その13 byれな

「そりゃ『ナニ』に決まってまんがな」
と答える気持ちの余裕が――僕にはなかった。
「えーとえーと」
一体なんて答えりゃいいんだ、と必死で頭をめぐらせようと思っても、刻一刻とタイムリミットが近づいてくる僕の意識はどうしても下半身へと向ってしまって少しも考えがまとまらない。
「あ、あたしゃこう見えても、孫が三人もいるんだよっ」
いや、充分「そう」見えます、とツッコむ余裕も勿論僕にはなかった。と、その時いきなり、
「ピンポンピンポンピンポン」
とドアチャイムが連呼されたかと思うと、
「桜内!おい!いるのはわかってるんだ!」
ダンダンダン!と物凄い勢いでドアを叩かれ、僕は
「ひいい」
と思わず悲鳴をあげてしまった。忘れようにも忘れられないその声は――言わずと知れた松井だ。
「誰かっ助けとくれっ」
橋田さんも、内側からダンダンダンと壊れるような勢いで外に向ってそう叫びはじめた。
鍵、あけりゃーいいじゃん、というツッコミも(以下同文)
「なにをしている!あけないか!」
「あけとくれ!たすけとくれ!」
ダンダンダンダンダン――ああ、ドアが壊れる!
逃避が得意な僕は思わずそんな二人を残し、ダダダダダダーっと階段を駆け上って自分の部屋に飛び込み、鍵をかけた。時計を見ると午後四時五十九分。
階下ではまだ橋田さんと松井がドアの内外で騒いでいる。とりあえずは橋田さんの前でのストリップを免れることが――できた、よな?
はあ、と大きく溜息をついた僕がドアから背を起こした瞬間、発作が(いつの間に『発作』になったんだ)僕の身体を襲った。
「くーーーーっ」
僕は無意識のうちに周囲に「電動優君」を捜していた。身体の中が熱い。下半身が疼いて疼いて立ってさえいられない。その場に蹲り、無意識にシャツのボタンを外しはじめようとした僕だったが、
「京!」
という叫び声にはっと我に返った。声の方を見やった僕の眼に飛び込んできたのは、窓ガラスの向こうにべちゃりと張り付いていた友哉の姿だった。

すまん。
『篭城』ついでに家中の鍵、かけちゃったんだったよ。

       
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