超高速リレー小説『薔薇の鎖』

presented by もぐもぐ&れな

その10 byもぐもぐ

「ごめんっ、友哉っ」
僕は、布団の上で土下座した。
もうこれ以上、隠す事は出来ない――――って、いまの僕の格好は、それこそ、何にも隠してない。裸で、さっきまではバイブ入れて、前を抜いていたという恥ずかしさも極まる痴態を見られた僕は、兄の薬のことも含めて、何もかも友哉に打ち明けた。
友哉は、僕の長い話を、質問も挟まず最後までじっと聞いてくれた。

「なるほどね。そういうわけだったのか」
手にしている『優君』をもう一度ウィンと鳴らして、友哉は言った。
僕は話し終わって、ようやく自分が裸だったことを思い出して、傍らにあるシャツを取り上げてそっと羽織った。
友哉は僕が服を身につけるまで『優君』をクネクネ動かして遊んでいたが、身支度が済んだのを見て、ニッと笑ってくれた。
「おかしいとは思ってたんだよ。昨日のことも、座薬の話も。それに、半年前から急に付き合いわるくなったのもな」
「友哉……」
「それにしても、優さん、すげえことすんなあ。まあ、昔からマッドSなところあったけど。SはサドのSな」
「ははは……」
僕は虚ろに笑った。
僕が、こんな変態な身体になってしまっても、変わらず友達でいてくれる友哉に、感動して胸が熱くなった。
「友哉……ありがとう」
「何が?」
「友哉……これからも、ずっと友達でいてくれるよな」
僕が俯いていうと、友哉は一瞬黙って――それはちょっとドキッとしたが――
「あたりまえじゃん」
そう言ってくれた。

「目の前の問題は、明日の午後五時をどうするかだな」
「そう、だね」
兄は明日の夜帰ってくることになっている。
兄のいない三日間。
一日目は、松井。
二日めは『優君』
そして、三日目、僕はどうしたらいいんだろう。
もう一度『優君』という選択が無難だけど……。
友哉の手にある『優君』にチラリと目を走らせた僕の心を読み取って、友哉が言う。
「でも、それじゃ、何の解決にもなんないだろ」
「解決?」
驚いた。僕の身体に、解決という道があったのか???
「半年間、五時になるとずっと抱かれていたんだよな」
友哉が、訊き辛らそうに僕の顔を見る。
僕は、羞恥に頬が熱くなりながら、コックリ頷いた。
「我慢しようとか思わなかったのか?」
「そんなっ、我慢なんて……」できないよと小さく口ごもると、友哉は僕の肩をガシッと掴んで、真剣な顔で言った。
「馬鹿野郎。やってみないで何を言ってんだよ」
「友哉?」
「タバコだって、麻薬だって、最初やめるまでは辛いけど、身体から抜けたあとは楽になるっていうじゃねえかっ」
友哉…………。
タバコと麻薬はずい分違うけど……僕の発作はもっと違うと思うけど……でも、わかったよ。やってみる。
「じゃ、明日、我慢する」
「ああ、そうだ」
「でも、一人じゃ不安だから」
僕は友哉をじっと見詰めた。
「一緒にいて」
友哉は、顔を赤くして頷いた。僕以上に、決意を漲らせてくれている。

ありがとう。友哉!

このときの僕は、これがますます自分を困らせる事態を引き起こすとは、これっぽっちも思っちゃいなかった。

翌日、学校に行くと松井から早々に呼び出しがあった。
まさか、職員室でいかがわしい事はされまいと踏んで、僕は素直に呼び出しに応じた。
「桜内、昨日は何で六時間目から後、サボったんだ」
他の先生の目を意識しながら、僕は反省しているふうを装って、しかも具合悪げに言った。
「すみません。体調が悪くて」
すると、松井は目だけでニヤリと笑って、言った。
「そりゃ、いかんな。今日はどうなんだ?」
僕は、そのニヤリに胸騒ぎを感じつつも、今日も夕方からは自宅で待機だと考えていたのでとっさに応えた。
「今日も、あんまり、よくありません」
出来れば早退したいと申し出ようとしたら、松井はいきなり立ち上がり、
「そりゃ、まずい。保健室に行かないと」
僕の腕をぐいと掴んだ。
保健室?
僕の胸騒ぎは、確信に変わった。

ヤラれる!!

ここでヤラれるわけには、絶対にいかない。
僕は、あることを思いついて、こう叫んだ。


       
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