超高速リレー小説『薔薇の鎖』

presented by もぐもぐ&れな

その8 byもぐもぐ

「う…ふっうっ……う…….」
どれくらいの間、そうして後を嬲られていたのか。
僕はもう、悲鳴をあげることも出来ないくらいに憔悴していた。
身体の奥をうねうねとかき回す単調な刺激は、快感とは程遠い、内臓を圧迫するような苦痛でしかなかった。
薬の効いていないときに、こういうことをされたのは初めてだ。
兄も、あの時間以外、僕を抱いた事はない。
(兄、さん……)
ふと、今、京都の学会に行っている兄の顔を、あの白皙の美貌を思い出した。そして、今僕の後を穿っているものが、兄のそれを模したものだということを思い出し、おかしくなった。
「ふっ、うっ……」
涙と自嘲の溜息を同時に零した僕を見て、先生はつまらなそうに尋ねる。
「なんだ。桜内。本当に夕方とずい分違う反応だな」
僕は、涙に霞む目で先生をうつろに見返した。
「やっぱり、本物じゃないとダメか?」
そう言って、僕の後ろからようやくそれを抜き取ると足元に放り投げた。布団の上でくねくねと動き回るそれは、それ自体妙な生き物でもあるかのような錯覚を起こさせる。
ぼんやりとそれを見ていたら、急に両足を高く持ち上げられて、さっきまで凌辱されていたそこに、先生の熱く固いモノがずぶりと押し込まれた。
「ぐ…んあっ」
思わず変な悲鳴が漏れた。
「あっ、やあっ、あぁ」
その差し込まれたものの熱さに、僕は身を捩った。
さっきまでのものとはまるで違うその熱が、身体の中を焼いていく。内臓が溶けるような感覚に、大きく背中を反らせて、僕は再び声をあげる。
「やっぱり、おもちゃじゃダメなんだな」
先生は嬉しそうに喉の奥で笑うと、かろうじて残っていた僕の上半身のシャツを半分剥ぎ取って僕の頭の後ろで丸めた。袖を抜いてもらえなかったので、僕の腕は不自由に一つにまとめられた格好になった。
先生の唇が、肌蹴た胸に降りてくる。
生暖かい舌先が、胸の突起を押しつぶすように擦りあげたとき、悪寒とは別の感覚が背中を走った。
(兄さんっ)
僕はぎゅっと目をつぶって、兄に助けを求めた。
僕をこんなにした原因は、兄であるというのに――――――

* * *
結局、僕のセカンドバージンは、担任の松井に奪われてしまった。
もう先生などと呼びたくはない。
薬による発作中の性交は、ある意味自分でも諦めがついていたのだが、全く普通の状態から犯されてしまったという事実は、普段脳天気と言われる僕でも、それなりにショックだった。

翌日、通学途中で友哉が声をかけてきた。
「おい、大丈夫か?」
ぎくっ!
「な、何が?」
「何って、病気。座薬入れてんだろ」
げ、そういうことにしてたんだっけ。
「言われてみれば、歩くの辛そうだしな」
ううう。
「でもさ。あれから考えたんだけど」
何をだよ。
「いくら担任でも、座薬入れてもらうっての、恥ずかしくないか?」
……恥ずかしいどころの騒ぎじゃ無かったよ。
僕が、ずっと黙っていると、友哉は立ち止まった。
「京」
幼馴染の真面目な顔に、僕も足をとめた。
「なに?」
「今度から、俺が入れてやるよ」
「…………………………………………」
言葉道理の意味にとっていいんだろうか?
僕には、もう何も考えられなかった。

教室に入ると、机の上にプリントがのっていた。
めくってみると、昨日の英単語五十問。
松井のメモが付いていた。
『昨日サボった分、今日も居残り』
ふざけんなっ。
けれども、今日も午後五時はやってくる。
今日と明日の午後五時を、僕はどう過ごせばいいのだろう。
切実に兄が恋しかった。
そして、その日一日授業が手につかなかった僕は、六時間目の授業をサボって家に帰った。
教室で発作を起こして、再び松井に抱かれたら泥沼になる。いや、もう充分泥泥だけど。
とにかく、ここは『優君』のお世話になろう。
覚悟を決めた。

家に帰って、玄関のカギを閉める。誰が来たって開けるものか。気分は七匹の子ヤギ。
『優君』を用意して、布団に正座すると、僕は時間が来るのを厳かに待った。
こうして厳粛な気持ちでつめると、タオルの上に鎮座ましました『優君』もご神体のように見えてくる。お神酒で清める代わりに、表面にローションを塗りつける。
痛いのやだもんね。
時計の針が、五時五分前を指した時、僕は儀式のようにおもむろに服を脱ぎ、丁寧にたたんだ。
うーん。何やってんだか……。

きたきたきたきたきたきた……

身体が熱くなる。下半身が疼く。この疼きが、そのうち僕を支配する。
僕は『優君』のスイッチを入れた。
グロテスクに動くそれを自分で後の蕾に当てる。
「はっ、うん、あふうっ」
ズブズブと沈めながら、変な息を吐いて、僕は瞳を閉じた。
兄さんの顔を思い出しながら……。
流石の薬の効果。僕の身体は昨日の夜と違い、『優君』の動きにも歓喜の涙を零した。上も下もね。
「はあっ、うんんんっ、やあっ」
自分でやってて、やあもないが、淫乱な薬が僕を酔わせているのだから仕方ない。
布団の上を転がりながら、『優君』で自分を掘りながら、右手で猛った股間を扱く。
「あああぁぁぁぁぁっ」
切なく高い悲鳴をあげて達した後、陶酔感に浸りながらゆるゆる目を開けると……………………
幼馴染の愕然とした顔が目の前にあった――――――
何で―――――――――――――っ!!!!!


       
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