超高速リレー小説『薔薇の鎖』

presented by もぐもぐ&れな

その7 byれな

「桜内。夜の座薬の時間じゃないか?」
松井先生はそう言いながら、僕に断りもなくいきなり靴を脱いで家にあがりこんできた。
「え…?」
ぽかん、とした僕の背に腕を回すと、先生は友哉を振り返り
「君は遅いからもう帰りなさい。寄り道するんじゃないぞ?」
と、有無を言わせぬ口調でそう言った。
「はあ…」
友哉は先生と僕の顔をかわるがわるに見ながら首を傾げていたが、
「さあ」
と先生に強い口調で促されると
「はい」
と不承不承頷いて、それじゃあな、と僕に片手を上げ、玄関のドアを出て行ってしまった。
「せ、せんせい?」
夜は座薬なんて入れないんですけど――って、五時にも勿論入れたことはないが。
「……ベッドはどこだい?」
流石英語の教師、bedの発音は素晴らしかった。
「ウチ、布団なんですが…」
「どっちでも構わない。君の部屋へ行こう」
なんか先生、キャラ変わってないか?


僕は先生に背中を押されるようにして階段を上り、自分の部屋へと入っていった。
「さっきポケットにしまったもの…出しなさい」
先生は僕を見下ろしながらそう右手を出した。
「え?」
「ほら、あの座薬だよ」
座薬だなんて信じていないくせに、先生はそう笑うと、ほら、と再び僕の前に右手を開いて突き出してくる。僕は仕方なく、のろのろとポケットから電動優君を取り出し、先生に手渡した。
「ズボン脱いで」
「え?」
先生の声に容赦はなかった。どうしよう――午後五時のシンデレラは午後五時以外は全然発情期じゃないのだ。あのときは確かに僕は先生に「欲しい」と懇願したけれど、今は欲しいどころか僕は先生が怖くて仕方がなかった。
「ほら、早く脱がないか」
先生がそう僕の肩を小突く。僕は殆ど泣きそうになりながら先生の目の前でズボンを脱ぎ、言われるがままに下着まで脱いで裸の下半身を晒しながらその場に佇んでいた。
「寝て」
朝、敷きっぱなしにしてしまっていた布団の上に僕は先生に言われて仰向けに寝転がった。先生も布団に腰を下ろすと僕の両脚を開かせながらその場で持ち上げ、僕は解剖されるカエルのような無様な格好のまま、僕を見下ろす先生のヘンに光る眼差しを受け止めていた。
「薬の時間だ」
先生はそう言うと、僕の後ろへとその指を挿入させてきた。
「…っ」
乾いた痛みに僕は思わず眉を顰め、責めるような視線を先生へと向けてしまった。
「…何が不満なんだ。薬が欲しいんだろ?」
先生はあからさまに不機嫌な顔をしたかと思うと、乱暴に入れた指をかき回しはじめた。
「…つぅっ…」
後ろに感じる痛みが増す。僕は無意識のうちに身体を捩って先生の手から逃れようとしてしまったが、先生はそれを許さず、僕の身体を体重で抑えながらもう片方の手で萎えきった僕を握ってきた。
「……やっ……」
やはり乱暴な手でそれを扱かれ、僕は新たに感じる痛みに悲鳴をあげてしまっていた。
「……どうした?さっきと随分違うじゃないか」
先生の息の方が上がってきている。そうこうしているうちに僕の後ろは先生の指に漸く慣れ、その動きを追うかのようにひくひくと動きはじめていた。
「……そろそろいいかな」
先生はにやりと笑うとそこから指を引き抜き、傍らに置いていた電動優君を取り上げて僕に示した。
「これが座薬だったね」
言いながらスウィッチを入れる。くねくねと動くそのグロテスクな姿を見せられ、僕は思わず息を呑んだ。
「入れるよ」
囁く先生の声が上擦っている。先生は僕の後ろを押し広げるとそれをずぶ、と勢いよくそこへと捻じ込んできた。
「いやっ」
そのとき僕を捕らえていたのは「恐怖」以外のなにものでもなかった。得たことのない感覚が後ろから僕の背筋を一気に突き抜け脳天を直撃する。
「ぃやぁっ……」
僕の両目に涙が溢れた。一体自分の身に何が起こっているのか、僕は泣き叫びながら闇雲に身体を動かし、自分を捕らえるその感覚から逃れようと必死になっていた。
「ダメだよ、そんなに動いちゃ…座薬が出ちゃうだろう?」
先生はそう言いながら僕の身体を無理矢理僕の脚を閉じさせ、そのまま布団の上へと押しつけてきた。後ろに入れられたそれが、より深く僕の中へと入ってきて、奥深いところを単調に刺激し続けるその動きに、僕は快楽よりも恐怖を感じ、必死でそれから逃れようと身体を動かそうとした。が、先生はしっかりと僕へと体重をかけ、僕の身体を布団に押し付けてその出口をふさいでしまった。
「いやぁっ…」
僕が悲鳴をあげるたびに、先生は楽しそうに僕の顔を見下ろしてくる。これから僕はどうなってしまうのだろう――恐怖がまた僕に新たな悲鳴をあげさせた。


       
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