あと五分。
僕は、血の気が引いた。いや、引いた血の気は、全部一局に集中しているような気が……。
どうしよう。
兄の研究室に行く時間はない。っていうか、その兄は「電動優君」をおいて今ごろは京都大原三千院だ。
「電動優君」を友哉から奪って、男子トイレに駆け込むにしても、友哉を探しているうちに、僕は発作を起こして、廊下のど真ん中でストリップを始めてしまうかもしれない。
そうなる可能性は大だった。
どうしよう。魔法の切れるシンデレラの気持ち。
そうこうしているうちに、身体が火照って、我慢できない疼きが僕を支配する。
「桜内、どうしたんだ、お前。いいかげんにしないと」
松井先生が、怒りに声を震わせ僕の前に立つ。
その仁王立ちの姿に……。
「王子さまっつ」
シンデレラはしがみついてしまった。
「なっ、何をするんだ。桜内っ」
松井先生がびびって後退さる。僕はその腰にすがって、ベルトをカチャカチャとはずすとスラックスのファスナーを下げた。
突然の出来事に愕然としていた松井先生だったが、僕の手がトランクスの中のものを取り出そうとするにあたって、強い力で抵抗してきた。
「何の冗談だっ」
そのほどよく筋肉のついた太い腕につかまれて、僕の身体は身動きが取れなくなった。それでも、身体の中を荒れ狂うこの熱はおさまらない。
「助けて……せんせいっ……」
僕の瞳は、おそらく欲情に潤んで、この上なくいやらしくなっている。
以前、兄からそう言われたのだ。
「せんせ、い……」
僕の顔を見た松井先生が、ゴクリと喉を鳴らして、そして腕の戒めを緩めた。
「……欲しい……これ…お願い……」
僕はいつの間にか涙まで流しながら、松井先生のトランクスに手を入れ、まだ勃ち上がってもいないそれを無理やり咥えた。
「桜内……」
掠れた声に視線を上げると、口の中のそれがドクンと大きくなった。
僕は待ちきれず、自分でズボンのベルトをはずして下着まで一緒に脱ぎ捨てた。
口の中のものが、また一回り大きくなった。
これなら、大丈夫だ。
僕は先生のそれに唾液をからませた。
「座って」
まるで、客に対するソープ嬢のようなしぐさで、僕は先生を椅子に座らせると、自らその上に跨って、身体を静めていった。
「ああ、ああああっ……」
兄とはまた違うその圧迫感に、新鮮な快感。僕自身も僕と先生の腹の間で天を向いて震え、先走りの雫が零れる。
「うっ、くっうっ」
松井先生が苦しげに眉間を寄せる。
その表情が、セクシーで、僕はますます身体が熱くなった。
「先生、動いて」
自分のものとは思えない。甘えた声。
しかたない。薬の効いている間、僕は僕じゃないのだから。
「ふ、ん、うっ」
英語の教師とは思えない体育会系ぶりを誇る松井先生は、その期待を裏切らず、物凄い腹筋を使って僕を何度も突き上げた。
「あっあっあっ、いいっ、ああっ」
「うっくっ、こっちも、いいぞ」
「ああ――っ」
そして、全てが終わったとき、僕は絶望的な後悔に襲われていた。
バイブもってる生徒もそうそういないけど、同性の担任とセックスする生徒はもっといないだろう。
「桜内……お前……」
松井先生も、放心したように僕を見る。
「みっ、見ないでくださーいっ」
僕は、泣きながら教室を飛び出した。
そして、自分が下半身すっぽんぽんと言う事実に気づいて、慌ててもどって、ズボンをはいた。
そして、学校を飛び出しながら気がついた。
(パンツ……忘れた)
王子様が、ちゃんと拾ってくれたかしら。くすん。
そして、その日の夜、玄関のチャイムがなって、僕をまたもや後悔のドツボに陥れることになるのだった。
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