突発SS《ヒカルの碁パロ〜卒業前日のカガXツツ》 [背景] 旅行先の富山のアニメショップで『ヒカルの碁』グッズを大量に買い込むという大人気ないまねをして、その中の一つ加賀と筒井のツーショット下敷きで妄想(笑) 眼鏡で微笑む筒井が可愛すぎて、もぐもぐ第一次眼鏡少年ブームの到来。 * * * 僕は、加賀にはかなわない――― ずっとそう思っていた。 卒業式を明日に控えた放課後の囲碁部の部室。 さっきまでいた進藤も帰ってしまって、僕は一人でぼんやり碁盤を見つめていた。 「よう、まだいたのか」 聞き慣れた声に顔を上げると、将棋部の部長が立っていた。 「加賀……。お前こそ……どうしたんだ?こんな時間に」 尋ねると、加賀は吸っていた煙草を流しに押し付けて消し 「卒業記念に、一局打つか?」 僕の前に座った。 「石、置けよ」 当たり前のように言う加賀に、胸がチクりといたんだ。 「いいよ、互先で」 「それじゃ、お前、すぐ負けちまうぜ」 ニヤニヤ笑う加賀を睨みつけ、僕は石を握った。 パチン パチン 校内にはもう誰もいないのか、静かな空間に石を打つ音だけが響く。 僕は、小気味良い音を立てて石を置く加賀の、筋張った長い指を見た。 僕は、加賀にはかなわない――― こんなに強いのに、何で将棋部なんかやってるんだ。 ずるいよ。 僕がどんなに努力しても、加賀には絶対に勝てない。 三年間、ずっと―――くやしかった。 「……ありません」 膝に置いた手が震える。 「はっはー。筒井、意外に粘ったな」 碁石を手の上で遊ばせながら、加賀が笑う。 「ま、俺様に勝つのは、百万年早ええけどな」 胸がぎゅっと痛くなった。 「悪かったなっ」 がたっと立ち上がって踵を返そうとした僕は、腰が実験台の角にぶつかってよろけた。 「あっ」 パキッ あろうことか、眼鏡が外れて落ちて、自分でそれを踏んでしまった。 「あーあ、何やってんだよ」 加賀が立ち上がる。 「ぶつかるのはいいとして、落とすのもいいとして、自分で踏んで割るかね」 馬鹿だなと笑う加賀の様子に、胸が締め付けられて鼻の奥が痛くなった。 「どうせ、馬鹿だよっ」 碁だって全然強くなれなかったし、成績だって勉強ちっともしていない加賀のほうが上なんだ。 「どうせ……」 自分の声が涙声になっているのに気がついてはっとしたときには、見つめたシューズの爪先にポタリと涙の粒が落ちていた。 何で? 泣く事なんかないのに。 明日が卒業式だから、僕は感傷的になっていたのかもしれない。 訳のわからない悔しさや悲しさで一杯になって、僕はポロポロ泣いていた。 「筒井」 加賀が近づいてくる。眼鏡の無い僕には、加賀がどんな顔をしているのか分からない。 こんなことで泣いている僕を、呆れているに違いない。 そう思ったら、よけい涙がでた。 加賀が右手を伸ばして、僕の頬を掴むと、親指で涙を拭った。 「筒井、眼鏡、新しいの買うの、しばらくよせよ」 「な……」 何言ってんだ? 「なんで、だよ……」 しゃくりあげたら、加賀の顔が近づいた。 「なんでって」 (え?) 「キスするとき、じゃまだろ」 加賀の唇が重なる。 (え?) 一瞬、何をされているのか、分からなかった。 けれど――― 「なっ、何、するんだよっ」 胸に手をついて押し返すと、加賀は、 「何って、俺にもわかんねえよ」 突き放すような口調で、身体は逆に僕を引き寄せる。 ぎゅっと、僕の頭を肩口に押し付ける。 加賀の制服から煙草の匂いがした。 「わかってんのは……」 加賀がボソッと呟く。 「俺は、お前にはかなわない……ってことだよ」 (え?) 信じられない言葉に、頭の芯がぼうっとする。 僕は、加賀にはかなわない――― ずっとそう思っていた――――― 終わり |
富山のアニメックで衝動買いした加賀X筒井のミニ下敷きが、私にこんな妄想を……。
ヒカ碁を知らない皆さん、ゆるしてね。
そして知っている皆さん「こんなんじゃなーい!!」というクレームは、謹んで遠慮させていただきます(笑)
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