「だから、それは女の子じゃなかったんだって」
「嘘つけよ」
「嘘じゃないよ。海堂龍之介くん。男らしい名前だろ?」
「名前、知ってんじゃないか」
「そりゃ、聞いたからね」
「やっぱり」
「名前くらい聞くでしょ。うちに来たのは強の落し物を届けてくれたんだからね」
「……」
「あの時は、強が『彼女』って訊くから、全然思い浮かばなかったんだよ。女の子みたいに綺麗な男の子って言ってくれたら、ちゃんと説明したのに」
「やっぱし、綺麗だって、思ってんだ」
強はうつむいて唇を尖らした。
「もーっ、強、どうしたの? 今日、むちゃくちゃ可愛い」
春日は強をぎゅっと抱きしめた。

ここは、春日のマンション。
強に会いに寮まで行った春日だったが、強が出てこないので部屋に乗り込んで拉致するように連れてきた。
当然、泉の協力のもと。
「なんか、嬉しいなあ。強がヤキモチやいてくれるなんて初めてじゃない」
ソファに座った自分の膝の上に強を乗せて、ぬいぐるみのように背中から抱きしめると、
「別に、ヤキモチやいたりなんかしてねえよっ」
強は、嫌がって身じろいだ。
春日は気にせずクスクス笑って、両腕に力を込めた。
一見線の細い春日だが、力はそれなり。
強く抱きしめられて、強は小さく喘いだ。
「強、可愛い」
「やめろよ」
「愛してる」
強を膝に座らせたまま、シャツの裾から手を滑らせる。胸の尖りを擦ると、強の身体がピクンと跳ねる。
「やっ」
「感度いい」
「エロいこと言うなっ…て、んっ」
くるくると指の先で突起を転がされ、強の身体が熱を帯びる。
春日の右手は、強のズボンのファスナーを下ろす。
「やめろってば」
「やだね」
下着の下に指を入れると、強のそれは既に形が変わっている。
「感じてんじゃない」
「エロオヤジっ」
「オヤジ?」
あははと春日は笑って、下着の中から強を取り出した。やんわり握って指先で形を確かめるようになぞると、強は嫌がって足を閉じようとする。
「閉じたら、ダメだって」
胸を弄っていた手で、その足を大きく広げると
「ひゃ、ん」
強は可愛く鳴いた。
「ズボン、脱いじゃえ。ほら」
片方の足を持ち上げて下着ごとするりと脱がす。片足だけにまとわりついているのが却っていやらしくて、春日は真剣に
(でかい鏡があったらよかったな)
と、考えた。
(今度買って、このソファの正面に置いとこう)
春日、綺麗な外見からは想像のつかない、かなりなエロオヤジになりつつある。
強の雄を弄びながら、器用にシャツのボタンを外していく。
強は恥ずかしそうにぎゅっと目を閉じた。
「んっ…あ…あっ」
春日が扱く指の動きを早めて、胸の突起を同時にくすぐると、強は耐え切れずに声をあげた。
「やっ、ダメ…もっ」
「イっていいよ」
囁く春日の吐息が、耳を弄る。
「やめ…」
強の手が春日の手の上に重なって動きを止めようとするので、春日はわざと激しく動かした。
「や、あっ」
短く叫んで強が果てた。飛び散った白い液が自分の腹を汚している。
「あ…」
ぐったりと強は、春日に背中を預けた。
「たくさん出たね」
強の腹と胸に散った精液を春日は嬉しそうにすくって、汚れた指先でまた胸の尖りをくすぐる。
「やだ、春日…」
ピクンと震えて、泣きそうな声をあげて首を振る強。汗ばんだ身体からはふわりと体臭が立ちのぼる。
春日は、強の首筋に顔を埋めて
「強の匂いがする」
大きく息を吸って囁いた。
「…エロオヤジ」
「うん」
「あ」
春日の指が後孔にのびて来て、強はきゅっと縮こまった。
「今度は、俺の番でしょ?」
囁く春日の声も、欲情に掠れている。
春日の、ズボンの布越しでも感じられる熱い昂ぶりに、強は真っ赤になって頷いた。
「ここで?それともベッドに行く?」
「ベッド」
「ふふ…」
「なんだよっ」
「今日の強、むちゃくちゃ素直で可愛い」
「うるさい、バカ」

たまに妬いてもらうのもいいなと、春日はふとどきなことを考えた。




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