風が吹いている。
「さぁ〜て、どう料理してあげようかしら?うふふふふふ・・・・」
先輩もようやくペースを取り戻し、妖しげな微笑を浮かべていた。
その横で、俺は準備体操に取り掛かった。
が、次の瞬間。
「一撃必殺青い舌!!」
学ランの口元から長くて青いものが伸びたかと思うと、
俺の額をしたたかに打ち付けた!
「ぐあっ!!」
視界が歪み、立っていられなくなった俺は地面に膝をついた。
「新人くん!」
先輩が短く叫ぶと同時に、セーラー服が動いていた。
「喰らえ!目にも止まらぬ右フック!!」
すさまじい衝撃の後、俺は星になった・・・気がした。
幾らなんでも、展開、早過ぎやしないか・・・?
人間は命が終わる時、それまで経験した出来事が
走馬灯のように頭の中を駆け巡ると言う。
俺の脳内では、メリーゴーラウンドがフル稼働していた。
「は!」
暴走するカボチャの馬車を振り払い、俺は目覚めた。
「あ、気が付いた?大丈夫?」
先輩が膝枕をしてくれていたらしい。
「ここは・・・」
ありがちな台詞を吐いて起き上がると、其処は俺の家だった。
「あの後、キミを追いかけていったら此処についたのよ。
で、屋根の上でのびてたキミを介抱してたの」
今はすっかりメイクも落ちて、
格好も地味になった先輩が穏やかな微笑みを浮かべていた。
「すいません、俺・・・」
「いいって、いいって!やられたら、やられた数だけ復活できるのが、
私達悪の組織の醍醐味でしょ♪」
先輩はポジティブだった。
「・・・そうですね」
沈み行く夕日に向かい、俺は誓った。
(次こそ、次こそは、連中に一泡吹かせてやるぜ!!)
俺の戦いは、始まったばかりだった。
了
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