おひめさまは、月といっしょにおともだちさがしのたびをつづけます。

「ねえ、お月さま。おともだちは、どこにいるのかしら?」

おひめさまは、お月さまのおでこをなでなでしながらいいました。

「そうですねぇ。どこにいるのでしょうねぇ。」

お月さまはのんびりとこたえます。そして、おひめさまにたずねました。

「おひめさまは、どんなおともだちがほしいのですか?」

おひめさまはこたえます。

「うーん、そうねぇ。わたし、おうまさんがいいわ!」

おひめさまは、1どでいいのでおうまさんにのってみたいとおもっていたのでした。



そのときです。おひめさまとお月さまのまえに、

それはそれはおおきなゆうえんちがあらわれました。

あか、あお、きいろ、みどり…いろとりどりのテントやさんかくのはた。かんらんしゃ。

メリー・ゴー・ラウンドもあります。

「みて、みて、お月さま!ゆうえんちだわ!」

おひめさまは、てをたたいておおはしゃぎ。

お月さまもニコニコしています。

「たのしそうですねぇ!いってみましょう、おひめさま。」

そういって、お月さまは、ゆうえんちのいりぐちをくぐりました。



ところが、ゆうえんちはしーん、としずまりかえっています。

かんらんしゃはとまっているし、メリー・ゴー・ラウンドもまわっていません。

「どうしたのかしら。みんなでねむっているのかしら。」

おひまさまはしんぱいそうにまわりをみました。

お月さまもふしぎそうなかおをしています。

おひめさまはおおきなこえでいいました。

「こんにちは!どなたか、いらっしゃいませんか?」

すると、ちいさなこえで

「はい」

とへんじがきこえました。

おひめさまが空とおんなじいろのめをぱちくりさせると、

めのまえにまっくろなうまがトコトコとあるいてきたではありませんか!

「まあ、あなたはどなた?」

おひめさまがたずねると、まっくろなうまはいいました。

「ぼくのなまえはガジェ。ここのメリー・ゴー・ラウンドのうまです。」

おひめさまはいいました。

「ガジェ。どうしてここのゆうえんちはこんなにしずかなの?」

ガジェはかしこそうなめをとじて、こたえました。

「いまはみんなおやすみちゅうなのです。

もうすぐたくさんおきゃくさんがくるから。

それまでは、おやすみするのです。」

「あなたはおやすみしないの?」

おひめさまがたずねると、ガジェはおひめさまをみつめながらいいました。

「ぼくはいいんです。ぼくは、おきゃくさんをのせてはしったりしないから。」

ガジェのめは、すこしかなしそうです。いったい、なぜなのでしょう?

「どうして?」

おひめさまがまた、たずねると、ガジェはまた、こたえます。

「ぼくはほかのみんなとちがって、ひとりだけまっくろだから。

まちがってまっくろにぬられてしまったから、

ぼくはおきゃくさんといっしょにあそばせてもらえないんです。

だって、おきゃくさんがのりたいのは、しろいうまなんですもの。」

ガジェはためいきをつきました。

そこで、おひめさまはいいました。

「だったら、ガジェ。わたしといっしょにあそびましょう!

わたし、あなたのせなかにのせてほしいわ!」

ガジェはびっくりして、かしこそうなめをまあるくしました。

「ほんとうに?ぼくのせなかに、のりたいのですか?

うれしいなあ!さあどうぞ、のってください!」

こうしておひめさまとくろうまガジェは、ゆうえんちのなかをたくさんはしりました。

お月さまは、ふたりをニコニコしながらみつめています。

「すごい!すごいわ、ガジェ!あなたって、なんてすてきなおうまさんなのでしょう!」

おひめさまはたのしそうにわらいます。

ガジェもうれしくてうれしくて、いっしょうけんめいはしります。

まるで、ゆうえんちがぜんぶメリー・ゴー・ラウンドになってしまったみたいでした。



ゆうえんちをぐるりとまわったあと、おひめさまはいいました。

「ねえ、ガジェ。わたしとお月さまといっしょに、おともだちをさがしにいきましょう!

わたし、もっとあなたとあそびだい!」

ガジェはおおよろこびです。

「もちろんですとも、おひめさま!

どうか、ぼくもつれていってください。」

こうしておひめさまに、はじめてのおともだちができました。

そしてふたりはお月さまにのって、

またあたらしいおともだちをさがしにでかけたのでした。

めでたし、めでたし。

おしまい

「おひめさまとあおいとり」をよむ


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