むかしむかしある空(そら)に、すてきなおひめさまがすんでいる月(つき)がありました。

おひめさまは月とおんなじいろのかみのけと、空とおんなじいろの目(め)をしていました。

あるひ、おひめさまは月にむかっていいました。

「ねぇ、お月さま?わたし、おともだちがほしいわ。」

おひめさまはひとりぼっちで月にすんでおりましたので、おしゃべりをしたことがあるのは月だけでしたし、

いっしょにあそんだことがあるのも月だけでした。

月はいいました。

「では、おひめさま。おともだちをさがしにゆきましょう。」

そうして月は、ゆっくりとうごきはじめました。

おひめさまはワクワクしながら、いろいろなことをかんがえました。

(おともだちって、どんなものかしら。やさしいものかしら。)

おひめさまは、月にたずねました。

「ねえ、お月さま?おともだちってどんなもの?」

月はこたえます。

「おともだちというのはね、やさしくて、たのしくて、そりゃあすてきなものですよ。」

それをきいて、おひめさまはうれしくなりました。

もうすぐ、そんなにすばらしいものがみつけられうのだとおもうと、

あしがかってにおどりだしてしまいます。

「これこれ、おひめさま。そんなにうごいたら、あぶないですよ。」

おつきさまがちゅういするのも、きこえません。

そのときです。

おひめさまが、あしをたかくあげると、おきにいりのしろいくつが、ポーン!とぬげてしまいました。

「あ!」

ぬげたくつはころころところがっていきます。

「お月さま、くつがぬげてしまったわ。」

おひめさまはあわてていいました。

なんということでしょう!おひめさまはたいせつなしろいくつをなくしてしまったのです。

「ああ、ああ、わたし、どうしたらいいの?」

おひめさまはなきだしました。

これでは、おともだちをさがすなんて、とてもできません。

ないているおひめさまに、月はやさしくいいました。

「なかないで、おひめさま。ちかくのお星(ほし)さまにきいてみましょう。」

そのとき、ふたりのそばをおおきなお星さまがとおりかかりました。

「あのう、すみませんが。」

と、月がこえをかけると、

「なんのようだ!」

という、おおきなこえがかえってきました。

「こんにちは。ちいさなしろいくつをみませんでしたか?」

おひめさまがたずねると、おおきなお星さまは、

「いいや、しらないよ。」

といって、どこかへいってしまいました。

「やっぱりなくしてしまったのね。どうしましょう。」

おひめさまは、またなきだしそうになってしまいました。

「ううん、こまったなぁ。」

月がこまったかおをした、そのときです。

「あれ?これはなんだろう?」

月は、じぶんのまつげのうえになにかがくっついているのにきがつきました。

そこで月は、おひめさまにおねがいしました。

「おひめさま。わたしのまつげになにかくっついているみたいなのです。とってくれませんか?」

おひめさまがそっと月のまつげをみると、そこにはちいさなしろいくつがくっついています。

「あら、まぁ!これはわたしのくつだわ!」

そうです、ころがってどこかへいってしまったとおもっていたくつは、月のまつげにひっかかっていたのでした!

「ありがとう、お月さま!」

おひめさまがニッコリとわらってくれたので、月もたいへんうれしくなりました。

「よかったですねぇ。ほんとうに、よかったですねぇ。」

おつきさまはうたうようにいいました。おひめさまはあんまりうれしかったので、もういちどおどりだしそうになりましたが


こんどはきちんといすにすわって、いいました。

「おどもだちをみつけたら、いっしょにおどりましょう。」

こんどは月がニッコリとわらって、いいました。

「そうですね。それはいいかんがえです。」

こうして、月とおひめさまは、またおともだちをさがしにいくことができるようになったのでした。

よかったですね。

めでたし、めでたし。

おしまい

『おひめさまとくろうまガジェ』をよむ


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