「あの像…、あれは、俺の師匠が封印した悪魔だ。」
険しい顔そのままの声音で明かされた真実に、兄妹は言葉を失った。
「修行の旅っていってもさ、何のあてもなくフラフラするわけにもいかねぇだろ?
だから、師匠が若い頃に辿った道を、俺なりに歩いてみようと思ってんだ。
で、まず最初に来たのがここ。」
師匠の話をする時、ジェレアムの表情は年よりも幼く見えた。
不満そうに尖らせた唇など、反抗期の少年そのものだ。
(…ちょっと前までの、お兄ちゃんみたい。)
旅立つ前のティトーを思い出し、アーイは懐かしさに一瞬、表情を緩めたが、
ティトーは気付かなかった。
「師匠は…お前らとはちょっと違うんだけど、やっぱり妖精族で、
ものすっごい魔力の持ち主なんだよ。
で、あの悪魔を封印して、この町を救ったんだけどさ、
見た目は綺麗だろ?アイツ。
だから、町の人間が飾り物にしようって言い出して…。」
大袈裟に溜息を吐くと、ロフがぱたぱたと耳を動かした。
「何かを封印したものとか、魔法の儀式とかってのは、
大勢の人間のいる場所に置いておかない方がいいんだ。
何がきっかけで封印が解けたり、壊れたりするかわからないからな。
でも師匠は「町の人間がそうしたいなら、そうしればいい。私の役目は終わった」とかいってさ、
そのままさっさとこの町を離れちまったんだ。
そこで、この俺がアフターケアをしにきたんだよ。」
魔術師の緊張した面持ちに、その場の空気がぴんと張り詰めた。

(続きます)

前へ★次へ


長編の部屋に戻るトップに戻る