どうも、こんにちは。 インタビューとか言われると、照れますね。 はあ、いつ葵のことをふっきったか、ですか? むずかしいですね。 あの一年の夏休みかもしれないし、卒業間近に葵の描いた絵を見たときかもしれないし。 まあ、人の気持ちってTVゲームのように簡単にリセットとかできるもんじゃないから『いつ』ってはっきり言えるもんでもないでしょ? でも、俺、今、本当にホッとしてんですよ。葵と秋山が上手くいってくれて。 負け惜しみじゃないですよ。だって、俺、マジ、辛かったんですから、二人の気持ち知ってて、黙ってんの。 秋山にも言ったけど、二人が両想いになってしまうのは悔しかった。それはホントです。でも、単純に悔しいって言うよりも、二人がくっついたとき、俺は、恋人も親友も同時に失うのかなって思って、それが怖かったんですよ。 被害妄想気味でしたね。 でも、黙ってるのも、辛くって。あ、これでけっこう小心者なんですよ、俺。こんな図体しててもね。 結局、葵の描いた絵のおかげで、ホント絵に描いたようなハッピーエンドでしょ。 よかった。よかったです。 俺は、どっちも失わなわずに済んだし。 恋人は失ったって? いやあ、結局、葵が俺の恋人だったことは一度もないですよ。 ずっと俺の片思いだったんです。なんかこうやって口に出すと、切ないなあ。あはは…冗談ですよ? え?あの山梨の夜ですか? 最後までやってないですよ。どこまでって?下世話な話題ですね。かってに想像してくださいよ。とにかく、ぐったりした葵を見て、俺、恐ろしくなって、それ以上何も出来ませんでした。 自分がやってんのが脅迫だってのも、わかってましたからね。 もう、あのときの話はカンベンしてくださいよ。 恋愛に懲りたか? まさか。 人生まだまだ先長いんだから。葵より好きになれる相手を見つけます。絶対。 え?前原ですか。やめてくださいよ。あんなの彼女にしたら、尻に敷かれて大変ですよ。 て、これも言わないでくださいよ。 そういえば前原も、葵のこと好きだったんですね。本人が言ってました。何でも、一目ぼれしたのが焼却炉の前だったって、なんか笑えますよね。笑えない?そうかな。いかにも前原って感じだと思ったんですけど。火!って感じでしょ、あいつ。工藤は、水とか風って感じですけどね。なんか乙女チックなこと言ってますね、俺。キモイから、やめやめ。 最近の二人の様子ですか? もちろん上手くいってますよ。いや、見たり聞いたりしたわけじゃないけれど、葵の様子からもわかります。 ええ、葵とは、よく会います。 般教はかなり重なってんですよ。一緒に授業受けること多いです。前原も一緒にいますけどね。はは。 そうそう、外から来た連中は葵と前原が付き合ってるって思ってるらしいですよ。葵はいいとして、前原どうすんのかな。葵といる限り彼氏できないんじゃねえの。って、どうでもいいことですけどね。 そう、それで葵と秋山ですけど、しょっちゅう秋山の家に行ってるみたいです、葵。 うちの大学も一、二年のうちは、田舎キャンパスだから、秋山んとことそんなに離れてないんですよ。秋山もうちの大学に来たことあるし。葵も、見学に行ったそうですよ。まあ、よその大学ってちょっと気になりますよね。 もうすぐ学祭だそうだから、俺も行ってみようかな、K大。 秋山、大学入って、ちょっとだけ髪伸ばして、かなり男前度が上がってますよ。もともといい男でしたけどね。 工藤も綺麗になったし…って、変な意味じゃないですけどね。って、変な意味ってなんだよ、と、自分で突っ込んでみたりして。 まあ、とにかく、お似合いの二人です。 葵が好きになったのが俺の親友の秋山だってこと、今は、心から祝福できるんです。 偽善者っぽいですか? そうですねえ、俺も他人事として聞いたらそう思うだろうから、いいですよ。 俺のこの気持ちは、あの二人さえ、わかってくれればいいです。 俺たちにしかわからないことって、確かにあるから。 あの時、あの季節を一緒にすごした俺たちだからわかること。 俺たちじゃないと、わからないこと。 だから、こういうインタビューって無駄じゃないですか? そんなことない? じゃ、もういいですか、苦手なんです。こうやってしゃべるのも、敬語も。 じゃ、失礼します。 |
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