ええと?何だかよくわからないんだけれど、二位だったんですって?
一位は、誰よ?男?その人、ハンサム?
まあ、いいわ。それで、あの後の話よね。

そうそう、智也くんのドラマCDは残念ながら、まだなのよ。かなりプッシュしてるんだけどね、中学生に「あん」とか「やん」とか言わせるのはダメだって頭の固いオヤジが言うのよ。オヤジって本当に私のオヤジさんなんだけどね。あ、言ってなかったかも知れないけど、うちの会社の社長って、私の父親なの。だから、好き勝手させてもらえている、いわゆる親の七光り娘なのよ、私。
でも、森君はそこまで知らないと思うわ。ま、別にわざわざ言うことでもないしね。
で、特権乱用で色々なところに顔を出しているわけなんだけど、最近は、森君のアフレコ見に行って、その後の様子を探るのが好きなの。
可愛い智也君が、こそっと迎えに来たりするのよ。もう、ラブラブって感じ。
浜さんや水木さんは、あ、森君の声優仲間ね、森君に可愛い弟ができて喜んでるとか思ってるみたいだけど、あなた、二十七にもなる男が、弟できて喜ぶもんですか。ねえ。
どうしてわからないのかしらね。
森君、よっぽど上手くごまかしてるのね。

そう、それでじゃないけど、最近付き合いが悪くなった森君に、夏海マリがものすごいモーションかけてるのよ。夏海マリってのは、三流アイドルから声優に転身してブレイクした子なんだけど、ほら、よくあるでしょ、アイドルの中じゃ十人並みでパッとしなかったけど、声優の中じゃかわいい部類にはいっちゃって、アニメのキャラとダブらせてオタク男に女神様扱いされちゃうような、あれよ、あれ。その夏海がどうもバクシンオーで共演してから、森君にご執心でね。もうすぐバクシンオーも最終回だから、アプローチも最後のスパートに入ってるって感じ。

で、弊社が出してるアニメ雑誌、今私が持ってるこれなんだけどね、これで、バクシンオー特集を組んだんだけど、その時の対談がすごかったのよ。

夏海に、好きなタイプの男性はとかインタビューするヤツもヤツだけど、だって、バクシンオーとは関係無いじゃない?でも、ま、うちのバカヤローがそういう質問しちゃったんだわ、そしたら夏海ってば
「森さんのような人です」だって。
バッカじゃないの。声優の世界でもアイドルでいきたいなら、もちっと考えなさいよ。
「流星のような人です」とか言うんなら、まだ気がきいてるけどね。
なりふり構わず、ってのが見えてイタイわ。イタタタタ…。
でも、うちのおバカは喜んじゃって
『夏海マリから森修一郎に熱烈ラブコール』
とか書いちゃうわけよ。

森君も森君よ。
「光栄ですね」とか、にこやかに話を合わせちゃって。
「僕には、付き合ってる男の子がいます!!」
って、ビシッと言えないものかしら。
え?無理?
そう?そうかしら……。まあ、いいけどね。
でもね、そこでビシイッと夏海を突き放せなかった森君のために、この出来上がった雑誌、智也君に送っちゃった。えへ。
え?いじわる??
違うわよう〜。もっと二人の絆を強めるためよ。

智也君が、この雑誌の対談を読むじゃない。そして、夏海マリと森君のやりとりにショックを受けるの。
智也君はそれで、森君の前でいつもと様子が違うのよ。

「どうしたんだ、智也?今日は、変だぞ」
「何でもないよ」
「何でもないって顔じゃ、ないだろ」
後ろからそっと抱きしめようとする森君の腕を振り払う智也君。
森君、ショック。
「どうしたんだ?」
さっきより真剣に訊ねると、智也君はそっとこの雑誌を見せるの。
対談のページには、熱烈ラブコールの文字。
森君は、はっとして
「馬鹿だな、こんなの冗談だよ」
「冗談でも…ヤダ」
「智也」
「嘘でも、女の人にこんなこと言っちゃヤダ」
うつむいて、きゅっと唇を噛んで
「お兄ちゃんは、僕だけのお兄ちゃんでいてくれないとヤなの…」
頬を染めてまつげを伏せたその横顔に、森君はメロメロ。
「悪かった、もう二度とこんなこと言わないよ」
「ほんと?」
「ああ、夏海マリなんて、あんな女、何とも思っちゃいない。俺は智也だけだよ」
「お兄ちゃん」
「智也」
ぎゅっと抱きしめて、そして森君の指は、智也君のシャツの下に。
「あっ…」
「ヤキモチ妬いてくれた智也、可愛かった…」
耳元で囁きながら、小さな突起を人差し指でくすぐると、
「んっ、やぁ…」
智也君が、あのかわいらしい声で鳴くの。
「智也」
「あ、お兄ちゃん…あん、あぁ…もっとぉ…」

…って、いいかげん止めなさいよ、私を。



このあとも、海老沢女史の語りは続きましたが、またの機会にお届けします(笑)


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