ぼくは、せいちゃんのまほうびん。

せいちゃんがようちえんにはいるとき、おとうさんがかってくれた、まほうびん。

ぼくたちは、いつもいっしょ。



きょうは、まちにまったにちようび。

かぞくみんなで、ゆうえんちにきたんだ!

もちろんぼくも、むぎちゃをしっかりだっこして、おともする。

それからきょうは、ミラクルマンもいっしょ。

ミラクルマンっていうのは、せいちゃんがだいすきなヒーローのなまえ。

せいちゃんのおたんじょうびにやってきた、おにんぎょうのことだ。

「さあ、せいちゃん、なにからのろうか?」

おかあさんがぼうしをかぶりながら、うれしそうにせいちゃんにはなしかけている。

「くるま!」

せいちゃんは、いまにもはしりだしそうだ。

「よしよし、それじゃあ、くるまにのりにいこうな。」

おとうさんが、せいちゃんをかたぐるまして、あるきだした。



「そーら、はやいぞ〜。」

おとうさんがまえをはしる。

「ほらほら、せいちゃん、がんばって!」

せいちゃんとおかあさんは、うしろからつづく。

きょうのうんてんしゅは、せいちゃん。
すごくしんけんなかおで、ハンドルをにぎっている。
(せいちゃん、がんばれ、がんばれ!)

ぼくはミラクルマンといっしょに、せいちゃんをおうえんした。



そのあとも、ぼくたちはいろいろなのりものにのった。

そしておひるごはんをたべて、さあ、つぎはどこへいくのかな?とおもったら、

せいちゃんがおかあさんのふくをひっぱった。

「おかあさん、あれはなに?」

せいちゃんは、なにかたてものをゆびさしている。

「ああ、あれは「ミラーハウス」よ。」

と、おかあさんがいうと、おとうさんが、

「いってみるか?」

といって、せいちゃんは、

「うん!いきたい!」

と、げんきよくこたえた。



「ミラーハウス」っていうのは、かべも、ゆかも、ぜんぶがぜんぶかがみでできたおうちのことだ。

せいちゃんは、あちこちにうつったじぶんのかおをみて、

めをくるくるさせながら、

「どれが、ほんとのぼくなんだろう?」

といった。

ぼくも、なんだかへんなきぶんになった。



ところが、でぐちまできたせいちゃんが、とつぜんおおきなこえをだした。

「あ!ミラクルマンがいない!」

せいちゃんがしっかりにぎっていたはずのミラクルマンがいなくなってしまったのだ。

せいちゃんは、あわててミラーハウスのなかへもどってゆく。

「あ、せいちゃん!かえってらっしゃい!」

おかあさんがよぶこえも、きこえない。



ぴかぴかのかがみがりのへやのなかには、

ミラクルマンがいっぱいいる。

「えーと、あ、これはかがみだ。」

せいちゃんは、いろんなところにちいさなてをのばす。

でも、なかなかほんとうのミラクルマンにとどかない。

「ミラクルマン、どこにいるの?」

せいちゃんは、ときどきあたまをぶつけながら、いっしょうけんめいミラクルマンをさがしている。

ぼくも、いっしょうけんめいミラクルマンをさがした。



すると、そのときせいちゃんのあしがなにかをけっとばした!

「あ、ほんもののミラクルマンだ!」

せいちゃんは、しっかりとミラクルマンをにぎりしめると、

こんどはでぐちをさがした。

「せいちゃーん!」

おかあさんのこえがきこえる。

「おかあさーん!」

せいちゃんもさけぶ。




「せいちゃん、ああよかった!」

せいちゃんがひとりででぐちまででてくると、おかあさんがぎゅーっとだきしめた。

「おかあさん、ぼく、ミラクルマンをたすけてあげたよ!」

せいちゃんは、すごくうれしそうにいった。

「お、それじゃあきょうはせいいちがヒーローだな。」

そういって、おとうさんがせいちゃんのあたまをよしよしすると、

せいちゃんはかおいっぱいでにっこりとわらった。



「さあ、おうちにかえろうか。」

ゆうがた、おひさまがあくびをするころ、ぼくたちはおとうさんのうんてんするくるまにゆられておうちへかえった。

せいちゃんは、くたびれてぐっすりねむっている。

だって、きょうはすごいことをやったんだもんね、せいちゃん!

あしたも、たのしいいちにちだといいな!



おしまい


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