メイド服

人間となったフリーラは、これまでと同じように世界を巡って、
人々を守ってゆく道を選んだ。
もちろん、苦難の道を共にした仲間達は変わらず力を貸すことを誓ったが、
新たな道を選んだことで、新たな出会いがあったのである。

ルイーダから紹介されたリーヨという女武闘家はすらりと背が高い美人で、
一見したところ近寄りがたい感じがしたが、
話してみると気取らない性格で、すぐに皆と打ち解けた。

「あなたの活躍を聞いて、ぜひ会ってみたいと思ってたの!
でも、イメージしてたのよりずうっと可愛らしいコだったから、びっくりしちゃった。」
ぱっちりとした緑色の目を輝かせながら、リーヨはフリーラの頭を撫でる。

(何だか、お姉さんができたみたい。)

どちらかといえば人見知りする元・天使だったが、朗らかでオープンな性格の新しい仲間とは、
あっという間に馴染んでしまった。



そんなことがあって、一緒に人助けをしたり、宝の洞窟を探検したりするようになってしばらくが経った或る日。
ロクサーヌの店で新しい装備品を眺めていると、唐突にリーヨが僧侶のテティーアに話しかけた。

「ねえ……そういえば、テトっていつもそういうなが〜い服を着ているの?」
「え?ええ、まあ……。」

オープンフィンガーを嵌めた手が、プリンセスローブを軽く摘んで、放す。光沢のある布地が、ふんわりと揺れた。
僧侶という職業も手伝ってか、テティーアは可能な限り肌を露出しない装備を好んだ。
防御力という観点に立っても、多くの場合、彼女が装備できるものはローブなどが多かったので、
誰も特別にその服装を気にすることはなかったのだが、新しい仲間は何やら真剣な顔で少女を見つめている。

「ん〜……勿体無いわ!ね、フリーラもそう思わない?」
「え?え?」

突然の話に、フリーラは戸惑った。テティーアも、不思議そうな顔をしている。

「勿体無いって、何がですか?」
「初めて会った時から思ってたのよ!テトなら絶対、もっとカワイイ感じの服の方が似合うって!」

確かに、真っ黒のおかっぱ頭に白い肌、少し伏目がちな顔はどこか人形めいており、
実年齢より幼く見られることもしばしばあった。
美人、というよりは、可愛らしい、という形容の方が似合う外見なのは間違いない。

「せっかくなんだし、たまには路線変更してみたら?うん、それがいいって!」
「そうはいわれましても……どんな風にすればいいのでしょう。」

力説するリーヨに、テティーアは慌てた様子で尋ねる。
武闘家はにっこりと微笑むと、尼僧の手を引っ張った。

「ねえフリーラ、貴方達が持っている装備品、使わせてもらっていい?」
「え、あ、うん。どうぞ。」

リッカやルイーダが、何事かという表情でフリーラを見つめる。

「確か、メイド服があったわよね……この前、必要に迫られて買ったやつが……。」

宿泊している部屋へと駆け上がっていく途中、リーヨがぼそりと呟いたのが、聞こえた気がした。



「じゃじゃーん!見て〜!カワイイでしょ〜!?」

数分後、満面の笑みを浮かべるリーヨに連れられて降りてきたテティーアを見て、
仲間達は唖然とした。

「あの……これは……、い、いいのでしょうか。わたし、こんな格好してしまって……。」

しどろもどろになるテティーアの頭上で、ヘッドドレスが揺れる。
黒が基調のメイド服のスカートをぎゅうっと手で押さえ、恥ずかしそうに頬を赤らめる彼女は、
いつもとは別人のようだった。

「いいに決まってるわよ〜!もうホント、すっごくカワイイから!!自信持って!!」
「……何で、リーヨの方がテンション高ぇんだ……?」

ハハ、と乾いた笑いを浮かべつつ、ザウロの目はしっかりとテティーアに固定されている。

「わあ……!テト、とってもかわいいよ!よく似合う!」

無邪気に喜ぶフリーラに、リーヨはうんうんと頷いた。

「だって、これからは旅を楽しまなきゃ!もう、何かに追われる時間は終わったんだもの。
装備品も実用性ばっかり重視してたら、つまんないわよ?」
「仰ることは……とっても素敵ですけど、どうしてメイド服なんですか!?」
「これが1番似合うと思ったのよ♪セティアさんにもらったソックスも、いい感じじゃなーい!」
「でもでも、何だかいかがわしいです!」
「そりゃそうよ!本物のメイドさん用の服じゃないもの、これ。何ていうか、夢?妄想?みたいな?」
「も、妄想ってー!!」

きゃあきゃあと賑やかに騒ぐ2人を眺めながら、フリーラとザウロは顔を見合わせて笑った。

「……案外、いいコンビになるかもな?」
「そうだね。良かったね。」

暖かい陽射しが、窓から差し込んでいた。


バニーガールだったり水着だったりビスチェだったりルーズソックスだったり、
毎回ドラクエにはステキな装備が色々出てきますが、
遂にメイド服まで。しかも男女を問わず装備可能(笑)。
テティーアは一時期、これに「ろうがぼう」と「ダークシールド」を合わせて装備していました。
足だけは普通に「じゅんれいのブーツ」でしたが。
何か、別の作品のキャラみたいになってました。

ちょっとマンガの「シャーリー」にも似てたかな。
こういうフリフリした感じの服は、小柄な女の子が着ると大変かわいらしいと思います。


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