ちいさなパンやさんがありました。

そのパンやさんでは、まいにちまいにちたくさんのパンをやいていました。

そのなかで、1ばんのにんきものが、『クロワッサン』でした。

クロワッサンとは、みかづきによくにた、ふわふわのパンです。

ちょっとおしゃれで、しかもおいしいので、みんなクロワッサンがだいすきでした。

そして、もうひとり、クロワッサンのことがだいすきなひとがいました。

それは、みかづきです。

みかづきは、じぶんによくにたかたちのクロワッサンのことを、いつもみていました。

(ああ、1どでいいから、クロワッサンとおはなしがしたい。)

と、みかづきはいつもおもっていました。

そんなあるひのことです。

みかづきがいつものようにクロワッサンをながめていると、かわいいまじょがとんできました。

「みかづきさん、こんばんは。なにをしているの?」

かわいいまじょは、やさしいこえでたずねました。

「かわいいまじょさん、こんばんは。

1どでいいからあの、ちいさなパンやさんのクロワッサンとおはなしがしたいんだよ。」

みかづきは、ためいきをついていいます。

「それじゃあ、わたしがおはなしできるようにしてあげるわ。」

かわいいまじょはそういうと、みかづきのはなをほうきでこちょ、こちょ、とくすぐりました。

「は、は、はっくしゅん!!」

びっくりしたみかづきが、おおきなくしゃみをすると、あらふしぎ!

すーっとからだがちぢんでいきます。

「あれ、あれ?」

あっというまにみかづきは、クロワッサンとおなじおおきさになってしまいました。

「はい、どうぞ!」

かわいいまじょはそっと、クロワッサンのそばにみかづきをならべました。

「あら、あなたどこからいらしたの?」

クロワッサンは、とつぜんとなりにやってきたふしぎなものにこえをかけました。

「こんばんは。わたしはみかづきです。」

みかづきはうれしくてうれしくて、うたいたくなるようなきぶんでした。

「まあ、すてき。」

クロワッサンはにっこりしました。1どでいいから、みかづきとおはなしをしてみたいとおもっていたのです。

「みかづきさん、みかづきさん。ようこそ!わたし、ずっとあなたとおはなしがしたかったの。」

みかづきはそれをきくと、うれしくてピカピカひかりました。

ふたりは、よるのあいだずーっとたのしいおはなしをしました。

やがて、おひさまがかおをだすじかんになりました。

「それじゃあ、さようなら。」

ふたりがにっこりしてごあいさつすると、かわいいまじょがみかづきをむかえにきました。

「みかづきさん、かえりましょ。」

そしてみかづきは、かわいいまじょといっしょにおうちにかえっていきました。

「ああ、かわいいまじょさん、ほんとうにありがとう。きのうはとってもたのしかった!」

おうちにかえったみかづきは、かわいいまじょにおれいをいいました。

「いいえ、どういたしまして!それじゃあ、おやすみなさい。」

かわいいまじょも、おうちにかえっていきました。

みかづきは、きょうはすてきなゆめがみれそうだ、とおもいながらおふとんにはいりました。

おやすみなさい、みかづきさん!たのしいゆめがみれるといいね!



おしまい


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