神とは、一体何なのだろうか。
空には人間達の世界が広がっている。
そこから、私を称える歌が、今日も流れてくる。
私は、神なのだ。
人は何故、目に見えぬものを信じ、祈ることが出来るのだろう?
だが…。
その人間を作ったのは私なのだ。
そして、1度はそれらを殺したのも、私なのだ。
語り継がれてゆく、遠い言葉。
私への祈りの言葉。
何故、私達は人間を生み出したのだろう。
彼等は、何故生まれたのだろう。
それは…。
私は、突然気付いた。
そう、私達は。
孤独だったのだ。
何か、自分と似ている、でも全く違う何かが、自分の近くにいて欲しかった。
だから、人を生み出し、彼等が育っていく間に、あんなにも彼等を想ったのではないか。
彼等のために笑い、涙を流したのではないか。
では、神とは一体何なのだろうか。
私は目を閉じた。
それは、きっと永久にわからないだろう。
何故なら。
衣を脱ぎ、泉の中に入る。そして、呟いた。
「私が神と呼ばれるものだから。自分が神である間は、決して分からない」
天上の祈りの声が、泉に波紋となって広がった。
了
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