もう、長い時間を生きている。
私の過去は、生きてきた人生という砂の中に沈んで、静かに眠っている。
目覚めることは無いだろう。
そして、私も。
もうすぐ砂に眠る日が来るだろう。

我が、最愛の娘よ。
お前は今も、日の光の下で、鳥と共に歌っているのか。

我が、最愛の友よ。
貴方の心から、死した私が消えて無くなることを望む。
そして、貴方は。
貴方の時間を生きて欲しい。

私はもうすぐ眠りにつく。
もう目覚めることは無いだろう。
だが、私が消えても。
水は流れ、風は渡り。
日は大地を照らすのだ。
そう、だから。
何も変わりはしない。
それで、いいのだ。

閉ざされようとしている瞳に、見たことも無い風景が映る。
だが、そこが私の還る場所なのだ。

瞳を閉ざす。
体を横たえる。
私は静かに眠りについた。
永遠の眠りに。


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