歴史のある街で、
いやに背の高い女を見たことがあるかい?
それは魔女だよ。
魔女達はとにかく古いことに詳しくて、
それでいて新しいことも知りたがる。
服にうるさくて、とても気紛れだ。
彼女達はずっとずっと背が伸びるんだそうだ。
オレの知り合いの魔女は、オレより頭1つ以上背が高いんだぜ。
かくいうオレは、電車に乗る時、身を屈めなきゃならないくらいの身長だ。
魔女達の住み処には女しかいない。
外から訪ねる分には、男でもいいらしいが、
一晩でも泊めてはもらえないそうだ。
もし魔女と共に暮らしたければ、
よっぽど彼女の気に入るものを用意するか、
どうにかして彼女を虜にするか。
もっとも、あんたが自分を賢いと思うなら、
魔女と暮らすなんて考えない方がいい。
絶対に後悔するからだ。
長く同じ人といると、色々な面が見えてきたりするものだというが、
魔女にはそれは当てはまらない。
ただ、彼女には、あんたの全てを見られてしまうがね。
さあ、もう魔女と暮らすなんてごめんだろう。
それとも、余計に興味が出てきたかい?
だとしたらあんたは随分な変わり者だ。
よろしい、では最後に1つ教えよう。
魔女と共に暮らす、もっといえば魔女と契るってことは、
あんたの命を文字通り握られるってことだ。
人間は脆い。
心臓や頭でなくても、無くせば生きていけない部分ってのが、たくさんある。
そしてそういうものは、魔女にとってこの上ないご馳走なんだ。
あんたの最期を、魔女は必ず見届けてくれる。
そしてあんたがいなくなった後、
あんたの残りを嬉々として食ってくれるよ。
おや、どうした?
何?急ぎの用ができたって?
やれやれ、それじゃ仕方がない。気をつけていくんだぜ。
了